stady -Extra edition-

暗殺だー、やれ特訓だー。と言いつつも、やはり彼らは受験生。夏休みを終えた彼らはまた一つ受験ラッシュに足を踏み入れているのだ。


「…そこで俺は思った」

「なんだよ岡島。急に真剣な顔してさ」

「岡島が考えることなんて、どーせどうしようもないことでしょ?」

「いや!今回はまともだ!」


胸張ってそういうが、貶されていることに対して何にも思わないのだろうか。


「俺たちは曲がりなりにも受験生!」

「あー。だな」

「確かにそうよね」

「そして並行して行われる暗殺訓練!」

「受験生と暗殺作業両立してんもね、私ら」

「でもやっぱり俺らは受験生!!」

「だからなんなんだよ!」

「はっきり言え!」



ふふふふふ…と笑う岡島にクラスメイト達はドン引きだ。なんだこいつ。どうしたこいつ。徐々に徐々に距離が開いていく。あと心の距離も。




「勉強訓練をしよう!!」

「「「「勉強訓練?」」」」

「そう!暗殺も大事だけどさ、なんだかんだまた中間期末ってあるじゃん?そんな事してたら受験だろ?で、合間に暗殺。そこら辺の同期よりも俺ら忙しいんだぜ?」

「お、岡島が…」

「まともな事を言っている…!?」

「槍か…?槍が降るのか…?」

「ち、違う…!全国の書店から…」

「岡島のバイブルが消えるのよ…!」

「お前ら失礼だな!…でだ!俺はいい案を思いついた」


それにどんな?どんな?皆興味津々だ。



「うちの学校、というよりこの3年E組には優秀な先生が主に3人いる!」

「あれ、4人じゃねぇの?」

「ほら、ビッチ先生はさ…、お色気担当じゃん?どっちかというと…お勉強担当じゃねぇじゃん?」

「「「「なるほど」」」」

「話を戻すと…。そんな優秀な先生が3人が居るならば、暗殺・勉強一度に両方出来たら楽だと思わねぇ?」

「…確かに」

「暗殺しながら頭も動かす…」

「体と脳を動かすから刺激があっていい…!」

「それいいじゃん!」

「だろォ!」

「でも、そんな事誰がやってくれるの?」


岡野の言葉にそれな…と腕を組み始める岡島以外の生徒達。しかし岡島には考えがあった。


「まぁ待て。落ち着け。3人先生が居るうち、最低1人でも捕まえれればいい」

「うん。だね」

「例えば殺せんせーに当たった場合、訓練は出来ても勉強にはならない。何故なら訓練に必死になりすぎて答えを考えるどころではなくなり最初の主旨からズレるからだ」

「「「「うんうん」」」」

「岡島の言う通り、必死になりすぎて勉強どころじゃないよね」

「逆に集中できねぇよな」

「そして烏間先生だった場合。暗殺も勉強もできるだろう。しかし!今先生はここに居ない!!防衛省の方へ行かれている!だから無理!!」

「そういや朝から居なかったなー」

「居なかった居なかった」

「ならば残るは誰か!!…そう。暗記のスペシャリストであり、格闘術の恩師。勉強も暗殺も共にハイレベルな…柴崎先生ただ1人!!幸いな事に、柴崎先生は防衛省へは行っておらず、ここに残っている!ちなみに朝「今日忙しいですか?」とさりげなく聞けば、「そうでもないよ?」と返ってきた!!これはもうこの人しかいない!!」

「岡島ぁぁぁあ!!」

「お前よくやった!!」

「普段からエロだとか言ってるけどやるときやるんじゃん!」

「見直したわ!」

「だろ!だろ!っつーことで、今から先生のところへ行きましょー!」

「「「「おー!!」」」」










「…ということなので」

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

「……あ、うん」


教員室にやって来た生徒達。やはり居た柴崎。そしてイリーナ。生徒達は柴崎のそばまで行くと簡単に説明し、そして頼んだ。最初は驚きはしたが、柴崎も二つ返事で了承した。



「ねぇ、私は?」

「あ、イリーナ先生はお呼びじゃないです」

「どういうことよ!」

「ビッチ先生は、お色気担当なので」

「また次の機会に!」

「…見学ぐらいならいいでしょ?」

「それなら!」



ということで、集まった先は外。体も動かすし、と言うことで全員体操着。柴崎もこの人数を一気に相手するのでネクタイを取る。あってはヒラヒラと邪魔だからである。イリーナは石階段に座り、いつの間にかその隣には殺せんせーがいる。


「考えつきましたねぇ、彼らも」

「何がよ」

「暗殺と勉強を一度にするにはどうすればいいか。彼らも受験生です。暗殺ばかり言っていてもいけないでしょう?両立するには何が最適かを彼らも考えたのですよ」

「それがこれね…」







「26人を相手しながらするには、ほぼ暗記問題になるけどそれでもいい?」

「構いません!」

「どんな問題でもどんとこいです!」

「逞しいねぇ君達」


中学三年、受験に関する問題。はて、どんな問題があっただろうかと思い出していく。ある程度の記憶を思い出したところで、生徒に準備をかける。



「じゃあ…、開始!」


2、3人一度に突っ込んでくるのを否し、応えながら問題を出す。



「前原くん、視細胞で生じた興奮を大脳の視覚中枢に伝える部分を何という?」

「えーっと、えー、あ!視神経!」

「正解。次、原さん。「王もまた神と法の下にある」という言葉を引用して法の支配の考え方を明らかにしたイギリス人は?」

「えっと…!…エドワード・コーク?」

「正解。次、杉野くん。事象の確率、全事象Uのどの根元事象も同様に確からしいとき、事象Aの起こる確率P(A)を求める式は?」

「へ!?え!えーっと…!あ、P(A)=n(A)/n(U)=事象Aの起こる場合の数/起こりうる全ての場合の数!!」

「よくできました。次、矢田さん。1798年、幕府は誰と誰に択捉島を探索させた?」

「えーっと…こ、近藤重蔵と…最上徳内!!」

「正解。次、木村くん。His help will enable you to finish the work in a few days.はい、和訳」

「えぇ!?えっと…か、彼が手伝ってくれれば…君の仕事は数日で終えられるだろう…?」

「合ってるから自信持って。次、奥田さん。浪漫詩の双璧と言われるのは誰と誰?」

「えっと、えっと…!し、島崎藤村、土井晩翠!」

「ハイ正解」







「す、げぇ…」

「問題出しながら本当に俺らの攻撃受けたり避けたりしてる…」

「しかも途切れることなくぽんぽん問題出てくるよ…?」

「その上なかなかすぐに出てこない問題ばかり…」








「いやぁ!流石柴崎先生!博識ですねぇ!」

「あいつの頭の中どうなってんのよ…!」

「しかし実にいい問題の出し方です」

「へ?」

「生徒が見落としそうな部分を多く取り入れています。それでいてテストにも出てきて落としやすいところばかり。うーん。非常に良いですね」









「吉田くん、助動詞「まし」の意味は?」

「え!?え、えー…た、ためらいを、含む…意志、推量…。…えー、あと一つはー…」

「残念。反実仮想だね。文中に出てくる時があるから気を付けて。次、狭間さん。小麦・米の輸入国TOP3上から順に?」

「…アメリカ、カナダ……オースラリア?」

「正解。次寺坂くん。連続した暗期が限界暗期以上で花芽形成する植物を?」

「あ!?あー、えー…た、短日、植物?」

「正解」




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