escape 3

そしてまた2人は後何人残ってる、と確認する。


「「…っ!!」」


そして2人にかかってくる電話。



『烏間さん!柴崎さん!聞こえるか!!どうして牢屋から犯人が脱走するんだ!!』

「こっちのセリフだザル警官!!」

「まともに警備も出来んのかお前は!!」



そしてその後も捕まえて逃げられ(逃し)の繰り返し。賄賂やサボりで次から次から檻から出て、世界中で取り逃がしブームを巻き起こした。あまりの体たらくに烏間、柴崎はキレた。



「あのバカダコはどこにいる!!出てこい!!」

「暇だからって長野県で信州そば食べに行きましたよ;;」

「やる気あんのかないのかどっちだ!!」



そして帰ってきた殺せんせーは烏間と柴崎に怒られながらも信州そばを食べている。



「やるって言い出したのはお前だろうが!!」

「1度くらいまともに逃さず監視してろ!!」

「いやぁ、つい!」

「「ついじゃない!!」」

「E組の警察はチームワーク一組行けてももう一組はゼロだ」

「やっぱ合わないね〜あの3人は」






「これじゃゲームとして成立しない。次逃したら俺と柴崎は降りるぞ」

「えぇ。もう絶対逃がしません」

「…《絶対》に重みを感じれないな」

「烏間先生、柴崎先生。ここから先は、泥棒の性能も上がっていますよ。…んー、柴崎先生は気配察知能力に非常に長けているのでもしかしたら分かるかもしれませんが」

「……何?」

「…ここからが本領発揮か」



そしてまた2人は別々に分かれ、探し始める。しかしどうだろうか。先程とは違い、気配が薄い。

それもそうだ。体育で習った気配の消し方をこのフリーランニングに取り入れ動いているからだ。そして、殺せんせーに言われた言葉を実行していた。


『ちなみに烏間先生と柴崎先生は…君たちの残した痕跡を追跡しているはずです。足跡や植物の乱れに注意して逃げるといいでしょう。…そして烏間先生と柴崎先生。どちらが一番厄介かと言うと、柴崎先生です。彼は足跡や植物の乱れよりも気配を重視にして探すでしょう。教わった消し方を利用し、逃げるといいでしょうね。

その上で、フリーランニングの基礎的な動き。縦移動や枝移動…ロングジャンプを駆使すれば…、危険な動きをしない範囲でも格段に追跡困難に出来るでしょう』






走りながら辺りを見るが足跡もなく、草木の乱れがない。烏間はあることに気付く。


…なるほど。生徒たちが牢屋にいる間に脱走のコツを吹き込んだのか。生徒が俺たちに気付くのも早くなった。4人小隊で前後左右を見張っている。これだけ上手く警戒されると…俺1人で捕らえるのはまず無理だ。…だが、こっちにはもう1人いる。しかしそれにしたって、短時間でよくここまで学習した!俺たちと奴とが同じ分野を違う視点から同時に教えると、ここまで急激に成長するのか。

だが、だからと言って奴と協力する気はない!そもそも奴1人でも…1分あれば全員捕らえてしまうんだろう。


草むらから出てきた烏間の前には、片岡・前原・岡野・木村がいた。
機動力が特に優れた4人組。先に俺を潰して柴崎への撹乱攻撃か。面白い。



「前方の崖は危ないから立ち入るな。そこ以外で勝負だ」

「「「「はい!!」」」」


一気に散らばる四人。良い逃げ足。1学期から積み上げた基礎が身についている。しかし、まだ本気の烏間から逃げ切るには足りないようだ。残る1人、前原の前に烏間は降り立つ。


「なっ!」

そして捕らえた。



「随分逃げたな。大したもんだ。だが、もうすぐラスト1分。奴が動けばこのケイドロ、君らの負けだな」

「…へ、へへへ。俺らの勝ちっスよ、烏間先生」

「何?」

「だって烏間先生は殺せんせーと一緒に空飛んだりしないでしょ」

「?当たり前だ。そんな暇があれば刺している」

「じゃあ烏間先生、ここから1分でプールまでは戻れませんね」


その言葉にハッとする。しかし、あることを思い出し、ふっと笑う。それを見た4人はなんだ?と首を傾げる。



「…警官は、俺とあいつだけじゃないぞ」

「え?」

「…っ!あ!しまった!ここに柴崎先生がいない!」

「?…、あぁ!!本当だ!!」

「で、でも待って!柴崎先生がプールに行ったとは…!」

「いや…、あいつは裏の裏をかくからな…。今頃…」











「(水の中なら殺せんせーは入ってこれない)」

「(1分間だけこの中にいれば良い!)」

「(そうすれば、このゲームは僕らの勝ち)」


水中の中にいる渚・カルマ・杉野は自分たちの勝ちだと信じて疑わなかった。そこにドボンッ!と何かが入ってき、水の泡が目の前に立ち込める。それに思わず3人は寝そべっていた体勢から体を持ち上げる。


「(!?)」

「(なんだ!?)」

「(殺せんせーは水の中には入れないはずなのに…!?)」


水の泡が消えていく。しかし見上げた先には何もない。3人の顔は困惑を表している。そんな彼らの肩に触れる何か。振り向けば、笑う柴崎がいた。


「(柴崎…、先生…!)」

「(うっそ…マジで?)」

「(まさか…柴崎先生が…!)」

「(3人確保)」


柴崎は3人の手を掴んで水面に。



「「「っぷはっ!」」」

「俺が来るとは思わなかった?」

「全然思わなかったっスよ!」

「柴崎先生は烏間先生といるのかと…。1回目はバラバラだったから次は一緒かなって…」

「はぁ。俺らは裏の裏をかかれてたってわけかぁ」

「そういうこと」


4人はプールから出て、皆の元へ。行けば、3人以外の全員は捕まっており、ラストは柴崎の捕らえたこの3人だったようだ。


「うっそ…」

「柴崎先生がプールに…!」

「えぇ!」

「裏かかれたー!」

「あぁ…3人は囚われないと思った?」

「「「「思った!!」」」」

「それは残念。でも喜んだら?」

「「「「え?」」」」

「ケーキ、二個だよ?」

「「「「……………そうだった!!」」」」


一気に元気になる生徒たちを見て、柴崎は優しく笑う。成長した生徒たちを見れて嬉しいのだ。


「…にしても先生びちょびちょだな…」

「あー、今日二回水の中入ったからね」


髪を触ればしっとりと濡れており、水滴も髪を伝って落ちる。それはどことなく…


「「「「い、色っぽい…っ!」」」」

「ん?」


なに?という顔をする柴崎の頭の上にパサッと落ちるなにか。



「タオル?」

「それで拭け」

「あ、烏間」

「風邪引くぞ」

「用意してくれたの?ありがとう」


ゴシゴシと雑に拭くと、タオルをどけて頭を振る。


「服も完璧濡れたなぁ。着替えないと」

「校舎に戻るか」

「うん。…さっ、皆戻るよ!今日は放課後ちゃーんとあれにケーキ強請るんだよ」

「「「「はーい!!」」」」


なんのケーキにしよう!と楽しそうに話すその後ろを烏間・柴崎は歩いたのだった。




「っくしゅ」

「……」

「っくしゅ」


校舎に着いた尻から隣でくしゃみをする柴崎。服には着替えて、いつものスタイル。


「…風邪、引いたのか?」

「え!?いやいや!確かに2回水の中入って、1回目は髪も碌に拭かないで走ってたけどそれじゃあ風邪なんて…」

「夏風邪は、しぶといんだぞ」

「……」

「…帰りに風邪薬買っていくか」

「…早めの対処、大切だもんね」



その日の帰り、生徒たちがケーキ!ケーキ!と言っている中、烏間・柴崎は薬局に寄り、風邪薬を買ったのだった。










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