小説 | ナノ
 「質問と宇宙人と必殺技」

「はっ……!
ヤンキー君は宇宙人説……!?」

「もうそろそろ上がっていいよ〜」

「あ、はーい!」


あれからというものの、

暇な時にあの光景を
何度も思い出してしまっていた。

そして、
その末に私がたどり着いた結論は1つ。

ヤンキー君宇宙人説。

「いやいや、
それは流石にな……いよな?」

否定しきれないのは、
私がまだ小学六年生の時

突然、
宇宙人みたいな格好の人が
校庭に現れて

小等部と中等部の校舎を
どちらも破壊しまくった事件が
あるからである。

そして、
破壊の際に使われていたものが
なんと、サッカーボールで。

私はその日
風邪で休んでいたから
細かくは知らないんだけど、

次の日、
「校舎破壊されたんで休校です」
って連絡網が来た時の
衝撃は今でも忘れられない。

校舎破壊されたんで休校ってなんだよ!!
って思わず電話口で叫んだもんね。

ちなみに
その後めちゃくちゃ咽せた。

校舎が修復された後に
事件も解決したーとは聞いたけど、
その全貌はまでは
先生も説明してくれなかった。

これが教育の闇……!!

今では同級生との笑いの種に
なっているけど、

それが今再び
笑えない事態になろうとは……!!


「ここで黄昏るの趣味なの?
ヤンキー君」

「その台詞そっくりそのまま
あんたに返してやるよ」


そしてさらに
笑えない事態が現在発生。

ヤンキー君と河川敷の道の途中で
無事再会です。


「いや私は
仕事の帰りだからー!

サボってるヤンキー君とは違うんだな〜!」

「あんた社会人だったのか……」

「素直にビックリされると
ちょっと反応に困るな〜

ほら!何処からどう見ても
社会人でしょ!」

「白いポロシャツに黒のセーター
下はジーパン。

何処をどう見たら
社会人に見えるんだよ」

「説明ありがとうヤンキー君」

お陰で
2行くらい説明省けたよ。


「そういう服装が求められる
職場なんですぅ〜!!」

「相変わらず
やかましいやつだな……」


心底うんざり、という顔をすると

ヤンキー君はぷいっと
視線を下のグラウンドに戻す。

グラウンドでは
この前見たユニフォーム姿の男の子達と
あのバンダナの人が
サッカーの練習をしている。

ヤンキー君は
サッカー部なんだろうか?

いや、今一番聞きたいのは
そこじゃない。

「や、ヤンキー君さ……」

「あ?」

そういえば、
この呼び名で怒らないね。

我ながらクソセンスがねえ呼び名だと
思うんだけど。

「き、聞きたい事があるんだけどさ……」

「……?」

「怒られてもいいから
聞きたいんだけど……」

「はあ?」

「殴られてもかま……構わなくはないから、
せめてデコピンで済ませて下さい……」

「予防線張るの早いな」

「痛いから喧嘩辞めたって
父ちゃんも言ってたし(?)」

「で、なんだよ?」

「や、ヤンキー君はさ!!!

宇宙人なの!!??」

なのー、なのー、と
声のデカさが反響して
ちょっとエコーが残る。

い、言ったーー!!!
でもこれは本当に気になってたんだよ!!

ヤンキー君の事、
宇宙人(テロリスト)って
思いたくないし!!

なんだかんだ優しいじゃん!?


「……病院紹介してやろうか」


「私のなけなしの勇気を
振り絞った質問を
真顔で返さないでください!!

警察呼びますよ!?」

「それはオレの台詞だ!」

「この偽ヤンキー!
少女漫画!デスソード!
ソード要素どこだよ!」

「褒めるか貶すかどっちかにしろ!
……なんだ、見てたのかよ」

「じゃあ間取って
厨二少女漫画ヤン君でどう?」

「長いしくどいんだよ!
せめてキーまではつけろ!」

「あいたっ!」

またパァンと良い音を立てて
頭を叩かれた。

でもやっぱり痛くない。

「デコピンで済ませてって言ったじゃん!」

「あ、悪い。
思うより先に手が出てた。」

「素直に謝らないで!!
せめてツッコんで!!」

「面倒くさいやつだな……」

「いやだってさー……
ブラックホール出す人間が
いてたまるかと思って。
後、謎の強度のサッカボールも」

「サッカー見ないのかお前」

「え?うん。
今のサッカーって
あれが当たり前なの?」

「当たり前って訳じゃない。
必殺技が打てるのは
素質があるやつだけだ。」

ひ、必殺技って……!!
少年漫画とか格ゲーでしか
聞かないよその言葉。

「じゃあヤンキー君は人間って事?」

「なんでそこから宇宙人って
結論に至ったのか、
逆にオレはそれが知りたいんだが」

「あー、そっか。
あの頃って言うと、
君まだ幼稚園くらいか」

「?」

「それは一旦置いといて。

良かった〜

いやー実は
見てからというものの、
ヤンキー君宇宙人説が
仕事中も頭から離れなくて」

「仕事しろよ」

「夢にはなんと
校舎を破壊するヤンキー君の姿が」

「お前はオレを
何だと思ってるんだ?」

「に、人間……?
いだっ!デコピンの方が痛いやん!」

「はあ……クソ、

お前と話してたら毒気が抜けた。
帰る。」

はああ……と最後に
クソデカため息をつくと
ヤンキー君はそのまま反対方向へ
歩いて行った。

「サッカー部の練習を、見てたんだよね?」

彼も何か事情を抱えてる人なのかな?

まあ、いっか。
もう会う事なんてないだろうし!

とりあえずは、
ヤンキー君人間で良かった〜!



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