「ねぇサンクレッド、ついでにもう1つお願い」
「なんだ?」
「もう一回キスして」

返事の代わりにそっと口付け、柔らかな唇を堪能する。名残惜しくも離れれば、目を開けた彼女の潤んだ瞳に胸が高鳴るのを感じた。

「癖になりそう」
「なんだ、初めてなのか?」
「そうだけど・・・私もいい大人なのに、引いた?」
「いや、むしろ嬉しいさ」
「嬉しいの?そういうものなんだ。そういうサンクレッドは・・・経験豊富そうだよね」
「んー・・・まぁ、な」
「あ、でもエンシェントテレポ以降だと?」
「それなら初めてだ」
「なら私も嬉しい」

暖かな夕陽につつまれて、柔らかな時間が過ぎてゆく。
予想以上の幸せを噛み締めていた。



「そろそろ帰らないとだよね?」
「いや、ちょっと待ってくれ」

リンクシェルを繋げれば、ウリエンジェの声が耳に届く。

「俺だ。ザンラクの様子は問題なかった。しばらく再召喚はないだろう。なんだが、例の彼女の相談に乗るんで今日は少し遅くなりそうだ」
『そうですか、了解しました。おめでとうございます、サンクレッド。お二人に十二神の祝福のあらんことを』
「ハハ、サンキュー」

あれだけで伝わるのは流石と言うべきか。自分の声が少し浮かれていたのかもしれない。

「ウリエンジェさん?」
「あぁ、分かったってさ。メリーの家にお邪魔していいか?」
「もちろん。人が来るのは初めてだよ」
「そうか。初めて尽くしだな」
「そうだね」

薄暗くなってきた街に、二人の影が消えていった。



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