「私さ、死ぬのが怖くないんだよね」
「・・・そうなのか」

突拍子も無い話に驚くも、その言葉にだいたいの内容を理解した。
思えば、彼女が自己の内面を晒すのはとても珍しい気がする。続きを促す。

「ゼノスに決戦前に言われたんだけどさ、戦いを求めているんだろうって。その場では否定したけど・・・何かを守るために戦うより、戦いのために戦ってるってのはあながち間違ってないかも、って」
「それで、理由を探しているのか?」
「うーん、もし本当に自分が戦闘狂で単に戦闘が好きなだけなら、ひょんなことで敵側に寝返ることになるんじゃないかって心配で・・・」
「・・・そうなのか?」
「だからマトーヤ様に相談しに行ってさ」
「マトーヤ様に!?」
「そしたらシュトラにも聞かれちゃって」
「・・・」

ちょっと思いもよらぬ方向に話が流れてきた。

「マトーヤ様に話したのは、前になぜ戦うのかって聞かれたことがあったからなんだけど。この話をしたら笑われちゃってさ。そしたらシュトラに恋人でも作ったら?って・・・」
「いないのか?恋人」
「うん、いたことない。というか、恋とかよくわからなくて・・・」
「そうなのか」

過酷な戦いの中に常に身を投じてきた彼女には、恋愛をする暇もなかったのかもしれない。
暁の一員として、不甲斐ない気持ちだった。
光の戦士である彼女はどれだけ皆の心の支えになってきたことか。
逆に彼女の心の支えとなれるような努力を、自分たちはしてきていたか?

さっきよりずっと小さく見える背中を見つめている。



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