「サンクレッドってさ・・・」
「何だ?」
「好きな人、いるの?」

予想外の質問に面食らう。
しかし相変わらず背を向けたままの彼女に向かって平静を装った。

「そうだな・・・いるぞ」
「えっそうなの?誰誰?」
「・・・お前も知ってる人だ」

言葉にしてから、少し勢い余ったなと後悔する。
彼女はうーんうーんと心当たりを探しているようだ。

「わかった、ラミンさんでしょう」
「ハハ、確かに彼女も憧れの人だったが、お前が聞きたいのはそういう話じゃないんだろう?」
「えっ違うの?もしかしてミンフィリア?」
「ミンフィリアは妹のようなものだ」
「そうなの?じゃあリセ?シュトラ?ユウギリ?・・・まさかアリゼーじゃないよね?」
「違う違う。それにアリゼーはまだ子どもじゃないか」
「良かった、サンクレッドがまともな大人で安心した。でもだとすると誰だろう・・・タタルさん?モモディさん?・・・シリナやサドゥとは面識ないもんね・・・」
「そうだな」
「んー、まぁ・・・誰かはわからないけど、そっか。好きな人いるんだね。だったらやめとこう」
「何の話だ?」
「ちょっとお願いをしようと思ったんだけど、やめとく」

今度はこちらが考え込む番だった。心当たりがひとつもなければ、お願いされる用事の見当もつかない。

「そこまで言われたら気になるじゃないか、取り敢えず内容を教えてくれよ」
「うーん・・・まぁ、サンクレッドは無闇矢鱈に話を広めるような人じゃないよね?」
「プライバシーは守るさ」
「じゃあ言うよ。あのさ・・・私と付き合って欲しいなって」
「・・・は?」
「思ってみたんだけど!好きな人別にいるならいい」
「それは・・・メリー・・・」

名前を呼ぶと僅かに目の前の彼女の肩が震えた気がした。相変わらず前を向いていて、表情は分からない。
うまい声の掛け方が思い当たらない。チョコボが地を蹴る音だけが響く。
しばらくの沈黙を先に破ったのは彼女のほうだった。

「ついでだから、私の話聞いてよ」
「あ、あぁ」



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