日の光が眩しくて、ココは目を覚ました。またベッドにいる自分に笑みが思わず零れる。00が運んでくれているんだと思うと、それだけで嬉しくて仕方が無い。人が見れば不憫な身の上なのかもしれない。だが、ココ本人に何の不満もなかった。愛しい人が暴力を振るうことは、ココにとって何でもなかった。ただ、側にいるだけで、ココの狭い狭い世界は、満ち足りていた。喉に少し違和感を感じるだけで、大した異常も無いようだった。ココはベッドから降りて、ドアを開ける。よく知った朝ごはんの香りが鼻を掠める。だが、愛しい人の香りはそこにはもう無かった。



「いない、のか・・・」



それだけ。00の姿がいないだけでなく、00がいたということを物語る匂いまでも、もう拡散して、そこに存在していなかった。ココは無意識に肩を落とす。00の行動までココに制限する権利はない。ココもそれは分かっているが、気持ちは落ち込んでしまう。ため息を一つつき、テーブルに腰掛ける。もう随分と冷めてしまった朝食に手をつける。冷めてしまっていても美味しく感じるのは、作った人を愛しているからなのだろうか。ココは自分の分もちゃんと作ってくれる00に、心の中で何度も大好きだよと呟いた。届くはずがないと分かっていながら。



「ごちそうさまでした」



食器を片付け、外へ出る。天気がよく、雲がほとんど無い。眩しすぎて目がチカチカした。暑くもなく寒くもなく過ごしやすい一日になりそうだと、愛しい人が好きそうな天気だと、ココは一人で微笑んだ。
00がどこに行ったのか、分からない。少し不安が襲う。帰ってきてくれなかったらどうしようと、取り留めのない不安がココを襲う。拭ってくれる人は、今側にいない。ココは、思い込むと周りが見えなくなる性質だった。ここに00が帰ってきてくれるという保障なんてどこにもない。まして昨日、ココは事の途中で気を失ってしまっていた。
飽きられてしまっていたら?
興味をなくされていたら?
怖い。
怖い。
ココの中で不安が恐怖へと変換されていく。ガクッと膝をつき、肩を抱く。たいして寒くも無いのに、ガタガタと震えが始まる。無意識に毒が体を回っていく。ぽたりぽたりと、汗と毒が落ちる。何の毒なのか、ココも把握していない。ただ、落ちたところの草は見る見るうちにしおれていった。



「何してんの?ココ?」
「、00・・・?」
「ん?」



顔をあげると、太陽を背中に背負った00がしゃがんでココを見ていた。



「え、ちょ、ココ何毒出してんだよ」
「あ、え・・・」
「とりあえず、毒仕舞えって」



仕方ないなって笑う00がココにはとても眩しくて。
太陽よりも、眩しくて。直に太陽を見た後みたいにチカチカして。






愛するということ→目の前がチカチカするということ