急に、花見がしたくなった。
「にしても、先生ってばやっぱ急だよなー」 「何だ、紀田は楽しみじゃなかったのか?」 「楽しみに決まってるじゃんっ!だって杏里も一緒だし!」 「ちょ、園原さんに絡むなよ!」
少し前を歩く3人の後ろからゆっくり歩いていく。くだらないことで騒ぎながら。ほほえましいなぁと感じるのは、私が年を取っているからなのだろうか。かれこれもう教師生活も十年単位で答えられるようになった。中堅と呼ばれる年なのかなぁ。 呆けていると、いつの間にか、3人がそこそこ大きめの桜の木の下にレジャーシートを敷き始めていた。
「あ、あんまり桜に近付けんなよ」 「なんで?」 「桜は根っこを嫌うんだよ」 「嫌う?は?」
桜を見上げる。 桜の根っこに死体が埋まってるっていうのは、桜が根っこの部分を嫌がるのに習ってのことだ。死体が埋まっているとなれば、みすみす死体を踏もうとはしないだろう。そういう意図あっての言い伝えだ。掘り返せ、埋めろという意味では決して無い。
「嫌う、って、どういう意味なんですか?」 「桜ってのはな?根っこを痛めちまうと、すぐに弱っちまうんだよ。最近の桜は品種改良とか進んでるし、そんなことも少なくはなってると思うんだけどなぁ」
桜は100年以上枯れずに生き続けるやつもいるけれど、早ければ20年待たずに枯れるやつもいる。そういうのは、虫か根っこが原因だったりする。 諸説あるけど、まぁ、桜が根っこ嫌うっていうのはあながち間違いじゃない。
「せーんせ!」 「ん?」 「ん?じゃないってば!感慨深く、桜を見ている先生も渋くて絵になるけど、そこは生徒で教え子であるこの紀田正臣に譲ってだ「先生、準備できたから食べよ」
紀田に呼ばれて振り向くと、もう食べられるように準備してあった。はは、花より団子ってか。 竜ヶ峰に呼ばれて、園原にちょいちょいと手招きされた。 うん、かわいいな。 桜っていうのは、綺麗だし、人をひきつける。けど、俺にとっては別の意味もあった。俺の長年の夢。
「おーしっ!今日は飲むぞー!」 「おー!」 「おーって正臣は未成年だろ!」 「俺くらいになると、未成年でも成人してるのと同じになるんだぞ!」 「日本語でしゃべってもらえるかな」
可愛い教え子たちとの、花見。
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