私は簡単に風に飛ばされちゃう。
だから、しっかり抱きしめてほしいの。
飛ばされないように。どっかに行っちゃわないように。
ねぇ、マスター。
それってわがままになりますか?
マスターの手でつなぎとめてほしいって、わがままですか?
マスターじゃなきゃ、駄目。駄目なの。




「ほら、おいで」
中に入ってニョロモに手を伸ばす。
卵から孵って初めてのプール。お風呂ですら嫌がる珍しいニョロモに育ってしまった。
知らないものが怖いのかと思ったが、どうやらこいつは水が苦手らしい。今だって俺の所に行きたいけど、水が邪魔をしている。
ほら、おいで。




シャッとか、シュッとか小粋のいい音が響く。
庭でコマタナが腕を振りながら殺陣を決めている。
本人は早く進化してカッコよくなりたいらしいけど、俺にしてみればそのままでも充分カッコイイんだけどなぁ。
「コマタナ」
「?」
呼ぶとこっちに駆けてくる姿に愛しさが募るばかり。




「バシャーモ、ほれ。こっち向け」
両手で顔を覆い赤面を隠す俺のパートナー。
俺の顔を見ると必ず赤面して顔を隠す。もう何年一緒にいると思ってんだ、こいつ。
頭を撫でると恐る恐る顔を上げて俺を見る。そいつのデコにちゅっとすると、そのまま頭から湯気を出して気絶した。




「見せてみ」
悔しそうにスッと左の針を差し出す。
自慢の針は所々欠けていた。
二本の美しい針が自慢だったこいつにしてみれば今の状態を俺に晒すことが悔しいんだろう。頭を撫でて笑みを浮かべる。
「大丈夫、ちゃんと治すから」
その目が少しだけ潤んでいるような気がした。



ますたぁはさいきんぼくであそぶのをおぼえたみたい。
「ウリムー!こっち来い!」
ぼくはよばれたからますたぁのとこにいくでしょ?
「うりゃ!」
うわあああああめがまわるうううう
「ウリムー!?どこまで転がるんだ!ちょ!」
ぼくをころがしてあそぶのはいいけど、めがまわ…




どれだけ言葉にしても、あんたには届いてない。
「大好き、愛してる」
「ったく、んな言葉どこで覚えてくんだ?ペラップ」
そう言って頭やくちばしを撫でる手の暖かさに溶けそう。溶けて一緒にこの思いも伝わればいいのにっていつも思う。
あんたに伝えたいのは、いつだって本心。




リオルの頃から憧れて、大好きで。
でもそれが憧憬じゃなくて、恋慕になったのはいつからだろう。
寝ている貴方の唇に己のを重ねたいと思い始めたのはいつだ。
邪な感情は悟られてはいけない。決して相容れないのだ。
種族。
性別。
笑う貴方の一番側にいて、そこで死を迎えたい。




手がないこいつは俺に食べさせてもらうのが大層お気に入りらしい。今も俺の足元でぴょんぴょん跳ねてご飯食べたいアピールに余念がない。
「はいはい、あっち行くぞー」俺の言葉に嬉しそうにリビングへと向かう。
食い意地が張ってるのか、ただ俺に甘えたいだけなのか。ったく…



私は可愛い。
みんなそう言うの。私は可愛い。
知ってるわ、みんな私が大好きなの!
でも、どうしてかしら?
貴方は私に振り向いてはくれない。貴方の側で可愛らしく鳴いても、足元にすり寄っても、ごめんなって言うだけで、可愛いとは言ってくれない。
何が足りない?
ねぇ、教えて。




眼鏡をかけて、パソコンに向かうマスターさんはとっても格好いい。僕はいつもパソコンの画面と並んでマスターさんの顔を眺める。
僕の特等席。
こんな格好いい人の手持ちだなんて、何だか恥ずかしい。
「…んだよ、んなにジロジロ見て」
マスターさんの指で撫でられた。えへへ…




くるくると俺の頭の上を飛ぶ。
俺の邪魔にならないところで、側に居たいから、らしい。2mの体では、町を歩く俺の隣は邪魔だということが分かるらしい。頭のいい奴は大好きだ。
「フライゴン!」
町を抜けて呼びかけると一目散に舞い降りてくる。
綺麗。まるで天女みたいだ。




泣き虫だったラクライはバトルを繰り返していく内にライボトルへと進化した。
進化してから、泣き虫だったこいつは泣かなくなった。ただ、姿勢よく遠くを眺めることが多くなった。
「ライボトル」
後ろから抱きしめてあやす。小刻みに震える体。我慢しなくていいんだよ。




「いやぁぁぁもうカブトちゃんそれやめてって言ってるでしょやめてって言ってることやっちゃうのツンデレなのでもそれツンデレって言わないのよただの嫌がらせなのよもう怖いんだからやめてよぉぉぉ」
暗闇の中で僕の目は赤く光って怖いらしい。
ならどうして電気消すんだろう。




それを見つけたのは本当に偶然。いつも通り泳いでいたら、珊瑚の上に寝てる人がいた。
長い髪が水に遊ばれて、肌も透き通っていて。
嗚呼、こんなに綺麗な人がいるんだって思った。
そのまま見ていたら、瞼が開いて、目が合う。
それだけだけど、私は彼を水面へと運んでいた。




求めるものはみんな違う。
俺も、マスターもきっとそう。俺よりも背の高いマスターを見上げる。俺の視線に気付かないマスターは俺の方を見ない。
胸がムカムカして気持ち悪い。
俺は早くマスターの自慢になりたい。
ずっと見ていてもらえるような、そんな自慢になりたいんだ。




求めるものは皆同じ。
感じる思いは皆同じ。
私も、主人殿も。
求められたい、愛されたい。
一方通行は嫌。
だって私も幸せになりたい。主人殿を幸せにするくらいいくらだってやる。それが私の役割なら、喜んで呪を唱えるわ。
ねぇ、主人殿。だから、貴方も私を幸せにして?




春、暖かくて気持ちのいい日はマスターと一緒に大きな木の下でお昼寝するのが日課。マスターの上で寝るとマスターに抱っこされてるみたいで、幸せな気持ちになる。
ふっと目が覚めてマスターを見るとアホ面な寝顔。
バレないから、そのままチュッとマスターの口にキスをした。




小さいボクには、何もできないけど、でも側にいたい。
ますたーはこんな弱いボクを許してくれるかな。
「ヒトモシ?どうした?体調悪いか?」
ポケモンなのに、どうしてボクは小さくて弱いんだろう。
もっと強くなりたい。強くなって、ますたーを守れるポケモンになりたいんだ…!