「1,2,3!」
「わんっ!わんっ!」
私の主はいつも私の稽古に付き合ってくれる。主は道場を持っているから忙しいのに、私のことを絶対に放ったらかしにしない。時間のできた時に私を呼んでは稽古をつけてくれる。
「リオルー!」
「!わんっ」
よぉし!今日も頑張るぞー!



おやまあ、今日も我が殿は忙しそうに走り回っておられます。昨日はあたくしとゆっくりすると言ってくださったのに…寂しいです。寂しいので、少しくらい甘えたって罰は当たりませんよねぇ。
「次はこれ―だっ!?」
足を凍らせてしまえば、あたくしと一緒にいてくれるでしょ?



俺の手持ちであるイシズマイは照れ屋さんである。
「おーい、イシズマイー?」
つんつんと貝をつつくとにょきっと顔を出す。じーっと俺の顔を見たかと思えばそそくさと貝に戻ってしまう。
嫌われてるのかと思ったけど、はさみで服の裾をつかまれてるので、大丈夫だと信じたい。



やばい。これはやばい。何がやばいって俺の生命がやばい。
状況を説明しよう!卵から返して愛情たっぷり育てたキバゴはオノノクスに進化しました!やったね!でも本人はキバゴのままでいるから、抱き付こうとしているわけで…体長ほぼ同じ。体重ほぼ倍。
あ、俺これ死んだ。



「ドダイトスちゃーん、俺もう無理〜あとよろちくび〜…」
わしの上で寝息を立て始めたのが、わしのマスターだ。子供のころからずっと一緒にいたやつの、まさか手持ちになろうとは。
世の中面白いものだ。暑さで参ったマスターを起こさぬよう歩き続ける。もう少しの辛抱だぞ。



背中のタネの緩やかなカーブを撫でると気持ちよさそうに目を細める。
「ふふ、気持ちいいか?」
「ダネフシッ!」
元気いっぱいに答えてくれるのが嬉しくてそのまま撫で続ける。
きっとそのうち寝ちゃうんだろう。膝に乗った重みが幸せの重みなんだと思うと頬が緩むんだ。



心地いい高さの指笛の音が平原に響き渡る。
風に乗った音はそのまま少し遠くまで遊びに行ったあいつにまで届く。そのまま立ち尽くしていれば後ろから聞こえてくる軽快な蹄の音。そのままにしていると、脇の隙間に首をすべり込ませ甘えてきた。首、痛くないか?
「おかえり」



おひさまぽかぽか。
ねむくなっちゃうなぁ。
ますたーをまってるのに、ねちゃったらだめなのになぁ。
ますたーまだかなぁ。
おかえりなさいっていいたいのになぁ…
「ただいまー…ってあれ?寝てる…出迎えてくれるんじゃなかったのかー?気持ちよさそうな顔しやがって。」



俺のワニノコはとにかく落ち着きがない。
「ワニワニワー!ワニワニワー!」
「うん、何が言いたいのか分からんからな。とりあえず落ち着け」
両手両足をばたつかせ何かを言いたいんだろうけどさっぱり分からない。
「ワニワニワー!」
「あ。これがほしいのか?」
ポフィンかよ。


「えっと、これはあっちで」
パタパタ
「これは向こうの棚で」
パタパタ
「…チコリータ?」
「ちこ?」
しゃがんで目線を合わせれば、なんぞ?という顔をしたチコリータ。いや、な?
「今は遊んでやれないから、あっち行ってな」
「ちこ!ちこりー!」
「遊べんぞ?」
「ちこ!」



さっきからずっと鏡の前でポージングを決め続けているかわい子ちゃん。うん、可愛いんだけどね、僕はそもそもあんまり興味がないんだよね。
帰りたい。何でムチュールで彼女の買い物を待つ彼氏の気分を味わわねばならぬのか…
「はぁ」
「!」
あ、見てないのバレちゃった…



「ゴニョゴニョってさ、いつもどこ見てんの?」
ほかのポケモンと違って(ストーン系は別格だ。あいつら石とかまじいみふだし)こいつの目?模様?とりあえず、俺は今まで視線があったことがない。合ってるのかもしれないけど、俺は感じてない。
「なーどこ見てんの?」



愛情表現っていうのは嬉しいものだ。まして言葉が通じないココドラたちポケモンからの愛情表現ならば尚更。だけど、少し問題が生じている。
「こ、ココドラ…!何度も言ってるけど、と、突進してくん――ぐぼぁ!」
体が鉄や鋼で覆われてるココドラは見た目に反し重いんだ…!



ふふん!この間のコンテストで僕が一番美しいって証明されたんだ!
ふふん!マスターもさぞかし鼻が高いことだろう!そうだろう、そうだろう!
ふふん!ボクが優雅に颯爽と歩いてる後ろを歩くマスターの顔は見れないけど誇らしそうな顔をしてるに違いない!
そう、でしょ…?



「タッツー」
治療用に作った小さめのプールに向かって呼びかけると、小さな影がふわふわ浮上してくる。
「たっつー」
「傷見せてくれ」
俺の言葉に背中の羽をパタパタ動かして背中を向ける。
「ん、大分よくなったな。そろそろ海に帰れるぞ」
「たっつー…」
んな顔すんなって…



この柔らかいだけじゃないこの…あ、低反発枕だ!とにかくカビゴンのこの腹以上に快適な枕を俺は知らない。くっそ快適。
「かんび〜…」
「あーもうちょい…」
野生のこいつと知り合ってから俺は毎日昼寝三昧だ。幸せ。野生だから嫌ならどっか行けばいいけど、大丈夫っぽいね。


「たじゃ!」
「うわあああ死んじゃったああああ」
「たーじゃ!」
「きゃあああああまじヒーローじゃねぇか!」
「たーじゃー!」
「うぷっ!ちょ、ツタージャ見えない!今いいとこ!」
「たーじゃー!たじゃ!」
「ごめんってば!ちょ、映画見れない!ツタージャ見せてって!」



救急でうちに運ばれてきた野生のツタージャがそのまま俺に懐いてしまって、手持ちにしないままずるずるとした関係が続いている。
別に俺は構わないし、こいつも気にしていないようだ。ただこの間同僚から手持ちじゃないことに大層驚かれた。
「ツタージャ、俺のになる?」



人は「愛してる」って言える。でもボクはどんなに頑張ってもマスターには伝わらない。こんなにも大好きで、世界で一番なのに、どうして伝えられないんだろう。神様って意地悪だ。
「ツタージャ?どした?」
マスターに抱きしめられる。鼓動と一緒に溶けてしまえたらいいのに 。