何度目かもう覚えていない。
何度も何度も、ただ君が幸せになる未来だけを望んできた。
他に何もいらなかった。僕は、君が幸せであってくれればそれでよかった。
それは僕のわがままなんですか?
どうしてあの子は当たり前の幸せの中で笑ってくれないの。
どうして、
どうしていつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつだって、
少し寂しそうに、悲しそうに、でも幸せそうな笑顔を最期に僕に見せるの?
馬鹿なのに、たいしたこと考えられないくせに、そのくせ責任感だけは人一倍強くて。
みんな自分だけが正しい中で君はいつもみんなから責められていた。僕は臆病だから、君が途中で消えてしまうことが怖くて、だからいつも黙り込んでいた。そんな僕を何も言わず君は、ありがとうって言ってくれた。君にとっては何気ない、今では覚えてもいないようなことかもしれないけど、それでも最初の時、僕は確かに救われていた。
何も出来ないくせに、ってみんなに言われていたけど、そんなことない。
君は僕にとっての、かけがえのない光だったんだ。君が僕だけに見せてくれた感情が、モノクロの世界に、色鮮やかに君を映し出したんだ。それなのに、

ぼくだけはしってる。きみはあのときからじぶんのためになくこともわらうこともなにもかもなくしたんだよね。






もう何度目なのか、数えてない。
だってもう数えるのが辛くなったんだ。何回も何回も、ただお前と一緒に笑ってる、お前と幸せになる未来だけを目指してきた。
世界なんて本当はどうだってよかったけど、でも世界にはお前もいるから。だから、仕方なく世界を守っていた。でもお前以外、本当はいらなかったんだ。
それってさ、俺の傲慢だったのか?
どうしてお前はいつも俺を守って、俺に笑いかけながら、死んでいくんだ?
どうして。
どうしてどうしていつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもどうしてなんだよ………!
どうして俺を置いていくのに、どうしてあんな幸せそうに笑って死ぬんだよ!
俺はお前がいないとダメなのに、どうしてお前は俺を置いていくのに、どうしてそんな幸せそうに、満ち足りたように笑って死ぬんだよ……!
俺は嫌だ!
それがわがままなら、わがままでいい!
世間知らずのお貴族様ならそれで構わない!
お前が、俺には必要だから…!
だから!

おれはおまえとのしあわせをつかみとるためならなんだってやる、だってそれがおれとおまえのやくそくだろ?







もはやお互い何度目の人生なのか分からなくなっていた。ローレライに願い、神に願い、己の業を重ねつつ、それでも自分が望む最善を掴み取ろうと泥濘の中足掻いて足掻いて、足掻き続ける。
ルークには名前が、
名前にはルークが、必要不可欠な半身と言っても過言ではなかった。だが、傲慢な神は、それが面白くなかった。己が書き記した物語にそんな要素はなかったからだ。青年になりかけの少年たちが、手を取り合いともに生きようと誓い合う。そんな要素、必要ない。
だから、女神は引き離し続けた。
だから、彼らは何度もやり直した。
繋いだ手を離すまいと、指の先まで力を篭めて、必死に、必死に。

星を一緒に眺めるとき
ご飯を食べ美味しいと笑いあうとき
怖くて思わず握った手に
ベッドのとなりに
君の体温があるという、ただそれだけを求めて
二人は 何度目か分からない 今日を やり直す

「おはよ、名前」
「……おはよ、ルーク」