火神の手は大きい。
まぁ、背もデカいから、手が大きいことは別に不思議じゃない。それに俺は火神の手が好きだ。


「火神?」
「んー…」
「寝てんのか?」

火神は自分の家よりも俺の家で過ごすことが多い。今日も休みだからという理由で朝からずっと居座っている。別に居座るのが悪いということはないし、居てくれるのは俺も嬉しいんだが、いささかくつろぎ過ぎな気もする。仮にも恋人という関係になったのだから、もう少し何というか…
俺のベッドに寝転がり、俺の枕を抱きかかえて爆睡する火神に色んな物を通り越して、ため息が出る。そのままベッドに腰掛け、火神の頭を撫でる。剛毛という印象よりもやわらかい火神の髪の毛を撫でるのは気持ちがよかった。ゆっくり一定のリズムで撫でると、無意識ですり寄る。くっそ、可愛いな。
普段甘えなれていない火神は、こんなに甘えてくれることはない。寝てる時くらいだ。手を握ると、しっかりと握り返す火神。
この大きな手が、今は何も思うことなく俺の手を握り返す手に、火神の心が面白いくらいに反映される。
思いっきり強く腕をつかむときもあれば、遠慮がちに伸ばされる手。
触ろうとして何故か引っ込めてしまう少し震える手。
そういう時、俺はたまらない愛しさを感じる。嗚呼、愛されてるんだなぁと感じる。
甘えたければ甘えればいいと、常々言っているのに火神の中の何かがそれをよしとしないんだろう。分かるような分かりたくないような。やっぱり、同じ男である前に俺は火神大我という一人の恋人なのだ。分かりたくない。甘えてこい。


「…ぅぁ?」
「あ、起きた」
「名前…あ、わりぃ。俺寝ちまって……」
「いいよ。練習で疲れてんだって。休める時に休んどけよ」
「んー」

頭から頬へと滑らす手に甘えてくる火神が酷く愛しい。こんだけ体がデカいやつが、こんな子どもみたいに甘えてくるなんて殺人ものだ。
そのまま上体を倒し、火神へ軽くリップノイズをさせながら啄むようにキスをする。擽ったそうにするけど、嫌ではないらしい。握っていた手も、指で火神の指をなぞったり、掌を押したり。


「大我大好き」
「…俺も」
「うん、知ってる」


見つめ合って、言葉を交わして、唇へと落ちていく。
数分後には、枕ではなく、俺を抱きしめ、抱きしめられる火神が俺のベッドに横になっているはず。