朝がよわい3年を起こしに行く三郎次



「おはよう」と彼はいつもいうけど、それはいつも「おそよう」なんだ。
僕が会いに行くといつも制服に着替えているところだ。そして、いつも僕がタックルみたいに抱きつくまで、彼は僕の存在を認識してくれない。悲しい。
「おはよう、三郎次」
「おそようです、○先輩」
でも、
「そうか、もうおそようか」
そういいながら、頭巾を手に僕の頭を撫でてくれる先輩が、僕は一等好きで。先輩が一番に頭を撫でるのが僕であるという事実に、きゅんと締めつける痛みがあるという事実に。
これからどうしたらいいのか分からなくて。嫌われたくなくて。
「どうした?三郎次」
この人の笑顔を独り占めしたいけど、方法が、分からなくて。独りよがりになってしまって。
頭がぐるぐるする。助けてほしいけど、助けてほしい人には絶対伝わってほしくなくて。いや、伝わってほしいけれど、伝わった後が想像できないから、怖くて。
「三郎次?熱でもあるのか?」
「いえ、大丈夫です」
鉢屋三郎先輩みたいに、仮面をつけていられれば簡単なのに。
この人の「おはよう」を聞く人に、僕はなりたい。
「おそよう」じゃダメなんだ。
「○先輩、行きますよ!食堂のおばちゃんがずっと待ってるんです」
「そうか、いつも悪いなぁ・・・」
「悪いって思ってるんですか?」
「はっはっは」
今はまだ、この手だけで満足してる僕がいる。
それをきっと後悔する日がくる。
分かっていれば、もっと早く手を打ったのに。馬鹿なんだな、僕は・・・言っても、仕方ない。
ねぇ、○先輩。僕だったんですよ。そこを望んだのは。どうして。どうしてですか。僕がはっきりしなかったからですか。
どうしてそこに僕じゃない人がいるんですか。笑ってるんですか。

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胡坐をかいていた三郎次を出し抜く孫兵。





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