守りたかったイチバン(TOA)


少年を救おうとした青年の弾はライガを守ろうとした少年に当たった。目の前で起きた出来事にライガの頭はついていけない。
なぜ打たれたの。
なぜ倒れてるの。
なぜなぜなんでなぜなぜなぜなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで殺したあああああああああああああああああああ!

命が守れる命には限りがある。人しかり獣しか。
愛は無限かもしれないが、命は有限。自分の命を放り出してでも守りたいもの。一番守りたいものを守る。それが、命に許された一つの枷なのかもしれない。

何が起こった。
何が失われた。
倒れてる。
無くなったの。
何が?
大切だったもの。
何で?
どうして?
どうして奪うの。
どうして壊すの。
いらない。
こんなとこいらない。
壊した壊した壊した。お前が。お前がぁぁああぁああぁぁあぁあああ!

それからライガはあまり覚えていない。
ただただ、喪失感が獣を苛み、激情が体を走り巡る。悲しみがライガを動かした。
壊された。
その事実だけが、ライガの中で黒く昏く鈍い光を発し続けた。

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現世で老衰。アビスに転生。赤ん坊で生まれ、何事もなく第二の人生を歩む。精神年齢はそのまま。マルクトの人里離れたのどかな農村で育つ。
主人公10歳のとき、群を離れたライガの子どもと出会う。敵意むき出しのライガだったが、触れ合う中で警戒心を解いて、あっという間にデレる。
両親や村の人はライガが人を襲わないことを理解し、認め、村で共存することを許す。村で生活する頃には、果物や動物の肉を主に食し、人は襲わない。それは成獣になっても変わらず、村の重労働を手伝ったりしていた。
主人公15歳の頃になっても、まだまだ甘えたでよく一緒にいることが多く、喉を鳴らして頭をすり寄せたり。微笑ましい村の光景。

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村に一人の旅人が訪れる。一晩泊めて欲しいという願いを聞き入れるが、ライガという魔獣に対し、一般認識がどういうものか知っているため、ライガを一時的に近くの森に避難させる。
「迎えにくるまで、帰ってきちゃいけないよ」
一日で帰ると思っていた旅人が居心地がいいと、数日居座る。好青年で帰れとは言いにくかった。主人公も嫌いではなかったが、ライガのことが気が気でなかった。
甘えん坊で寂しがり屋。元々の気質もあったが、主人公が甘やかした感が多々あった。
ライガは一人で森の中、言いつけをきちんと守ってじっと待っていた。必ず迎えに来てくれる。寂しくても、寂しくても、我慢しよう。だが、夜の森はそんな健気な決意・勇気さえも、すり減らしていく。
風が揺らす木の葉のこすれる音がいつも以上に大きく聞こえる。
雫が落ちる音が何かの歩く音に聞こえる。
怖い。怖い怖い怖いこわいこわい。
5日目の夜、ライガのなけなしの心はついに折れる。我慢しきれなくなったライガは、村へ走って帰っていく。
ごめんなさい。ごめんなさい。我慢できなくてごめんなさい。いいつけ守れなくてごめんなさい。ごめんなさい。

主人公も旅人の青年に気に入られ、一人で森へ行くことが出来ずにいた。ずっとライガのことがぐるぐるしていた。
青年が村に来て5日目の夜。家で青年の相手をしているととても聞きたかった、でも今は聞きたくなかった声が聞こえてくる。驚き警戒する青年を置いてけぼりに、主人公はライガの元へ足を速めた。

村のすぐ側にある川原に、ライガはいた。ここまで帰って来たはいいが、やはり言いつけのことがあったのだろう。村に入ることは戸惑ったようだ。主人公がかけてくるのに気付くとライガは一目散に駆け寄る。押し倒さんばかりの突進を、力を逃がすことで受け止め、抱きしめる。
寂しかったといわんばかりに思いっきり甘えるライガ。
寂しい思いさせてごめんなと言いながら甘えさせる主人公。
ライガにとって、主人公はなくてはならない存在になっていた。
「お前、帰ってきちゃったのか」
「ガルゥ…」
「そうだな、寂しかったよな、ごめんな」
「……ガゥ」

「その子から離れろ!」

パァン

主人公の存在が、無くては、ならない、存在に、なっていた。




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