※キス裏表現あります 苦手なお方はご注意ください。 読まなくても今後の展開には支障はありません※ それとなく甘い雰囲気。 私がリドルの部屋に行くたび、私達の関係を知っているリドルの友人らは気を遣ってか偶然か、決まってそこにいない。 リドルは恥ずかしいという気持ちが欠落してて、人前でも堂々と引っ付いてきたりすることがあるから、席を外してくれるのはすごくありがたいのだけれど。 「●●・・・」 頬をすべるリドルの手がくすぐったくて身をよじらせる。 ベッドに座る私の前に立ち、指先で私の顔を輪郭をゆっくりとなぞりあげ、顎先にたどり着いたらクイと私の顔を上に向けた。 整った顔も見飽きたといえば見飽きたが、やはりこんなに近くにあれば動揺もする。 恥ずかしくて目をそらすけど、卑怯にもリドルは諌めるように名前を呼んできた。しかたなく、躊躇いながら視線を戻すと、間もなく目じりに柔らかい唇が当たった。 驚いて目をぎゅっと閉じる。彼の唇はあちこちにキスを施しながら、着実に私の唇に近づいていった。 もどかしいような、恥ずかしいような気持ちがぐらぐらと煮立ち、リドルが唇の端に焦らすようにキスをしたところで沸点を一気に越えた。 「リドルっ!」 顔を引きながら彼の頭を押し返すと、彼は一気に不機嫌になった。 「・・・なに?」 むすったれて、頭を押さえる私の手を払い落とした。 なに?じゃないよ、なに?じゃ。 言いたくても、羞恥の名残で口をぱくぱくと動かすことしかできない。 「何言ってるのかわからないよ」 言いながら私の髪に指を埋めて顔を近づけ、またさっきの続きをしようという雰囲気を醸し出し始めた。 「ちょ、待ってってばっ」 彼の口に手を重ねて押し返す。 これには完全に機嫌を損ねたようで、バシッと私の頭を叩いてから、隣にスプリングを軋ませながら座り、そのまま私に背を向けてベッドに倒れこんでしまった。 「何を嫌がるのかわからない」 ・・・何を拗ねてるんだこの人は。 「別に嫌ってわけじゃないけど、リドルのやりかたが・・・」 恥ずかしいんだよ。 「僕は僕のペースでやりたいんだ」 私のペースは丸無視ですか。 彼の唯我独尊的なところが垣間見えたところで、このままうじうじとされてしまっては鬱陶しい。 普段は腹が立つほど大人ぶってんのにどうしてこんなときばっかり。 私はため息をついて、彼のほうにずりずりと近寄った。 「ごめんね」 なんで私謝らないといけないんだか。本心はそれだったけど、こうでもしないとこの人の場合はいつまでこうやってるかわからないから。 ぴくりとも動かないリドルの頭に手を置いて、たまに機嫌のいい彼がしてくれるように髪を梳いてみた。 「そんな傷つけるつもりじゃなかったんだけど、私にもタイミングがあるし・・・」 「じゃあ」 言葉と同時に、髪を梳いていた手をがしりと掴まれた。 寝転がったまま首を少し回して私のほうを見たリドルの目が妙に楽しげに見えたのは、たぶん見間違いか。だって今はさっきみたいにしょぼくれてるし。 「じゃあ?」 やっと口を開いたことに安堵しながら、彼がいつもの調子に戻るのももう少しだと自分を励ました。この『じゃあ』の条件をのんでしまえば・・・。 「●●のペースでいいからキスしてよ」 のんでしまえば・・・。 のそのそと起き上がったリドルは私のほうをじっと見て、まさに「待ってます」状態。 「い、いやいやいや!無理!!絶対無理!!」 慌てて距離をとると、リドルはまた眉を下げてそっぽを向いた。本当になんなのこれ!! 少しそのうじうじにイラついてきて、つい言ってしまった。 「わかった!わかったから!!」 叫ぶように言うと、リドルの口の端が微かににやりと持ち上がったように見えた。 「そう。じゃあよろしく」 大人しく待っているリドルに苦虫を噛み潰したような気分になり、早くも了解なんかしなければよかったと後悔し始めた。でもリドルの手前、一度言ったことを撤回するなんてことは自殺行為に等しい。・・・さっさと終わらせてしまおう。 先ほどとったばかりの距離をまた自分から詰め、少しだけ顔を寄せた。 あーやだやだもう・・・。恥ずかしい。 ある一定の距離から顔をそれ以上近づけることができず、わけもなく目でぐるぐると部屋を見渡した。 「●●」 急かすようにしてくるリドルは人の気も知らずに。 「わかってるってば!目閉じてよ!!」 恥ずかしさをごまかすために大声を出す。 「なんで怒鳴るのさ」 ぶつぶつ文句を言いながらも、睫が縁取る瞼をそっと閉じた。 その隙に私は息を何度も吸ったり吐いたりして心臓を無理矢理宥めた。 少しばかり気持ちが落ち着いたところで、よし、いくぞ。と、変に気合を入れ、震える手を彼の頬に添えた。ぴくり、と彼の睫が揺れる。 ええい! 自分も目を閉じて、唇の先がちょんと触れるくらいのキスをした。こんなものかと思うけれど、相手からしてくるのと、自分からするのではまったく違う。恥ずかしさが。 今までにないくらい赤いであろう顔を早く隠したくて、少しだけ触れ合っていた唇を離した。離そうとした。 でも即座に腰に腕を回され、頭の後ろにも手が入り、気持ち触れていた唇がすべて押し付けられた。 「!?」 なんだこの人はわけがわからないぞ。さっきまであれだけ拗ねて・・・。 我に返る前にリドルの舌が滑り込んできた。 「んっ!」 ぎくりと肩に力が入る。無意識のうちにリドルのシャツを強く握り締める。 歯列をゆっくりとなぞる動きに震え上がる。上顎や舌に彼の舌が触れたときには意図せずともくぐもった声が漏れた。 背筋に走る電流のような感覚に耐え切れず、固く閉じた瞼の隙間から涙が落ちた。それでも唇を甘噛みしたり、無理矢理舌を絡め取ったりと、慣れないことを止めようとしないリドル。 時折彼の唇から漏れる熱い息になんだかいけないことをしているような気分になって、顔どころか体全体の体温が上がった気がした。 体なんかあってないようなもので、すっかり髄を抜き取られた私はリドルの腕に支えられてようやくそこに座っていられる状態だった。 五分経ったか十分経ったか、もしくはそれ以上経ったか。 触れ合いすぎてひりひりと痛む唇がようやく離れた。 潤む視界を開けると、まだ近い場所でリドルが満足そうに微笑んでいた。その様子はまるでさっきまでのしょぼくれていた表情とは似ても似つかないもので、ボーっとする頭で私はやっと彼にはめられたことに気がついた。 リドルは唾液で濡れた自分の唇をぺろりと舐め、目を細めて私の耳元に唇を寄せ、いたずらっ子のように楽しそうに喉を鳴らして囁いた。 「ごちそうさま」 |