風邪
「全く…音也は風邪をひかないのになぜあなたはひくんでしょうね」
イッチーが甲斐甲斐しく濡れたタオルでオレの体を拭く。照れくさくて少しくすぐったい。
「ははは…ひどいなイッチー」
笑ってごまかしてしまうのはいつもの癖だ。
「しゃーねーなー。お前寝るときせめて何か着ろよ」
翔は先ほどまでオレの脇に挟んでいた体温計の数字をみて、9度以上あるじゃねーかと呆れた様子でこぼした。
オレは風邪なんてめったにひかなくて風邪ひいたときはいつもジョージの男らしい看病を受けていたから、なんだか風邪引くのも悪くないかもしれないなんて馬鹿げたことを考えた。熱があるから思考回路がすこしおかしいんだ。普段の俺ならどうせ看病してもらうならレディにしてもらいたいね。なんて軽口をたたけるはずだから。
ガチャ…と、ドアを開ける音がした。聖川だ。今日はもうピアノの練習を終えたのだろうか。いつもより早いな。とぼぅっとした頭で考える。まだ入学して間もないころに風邪をひいたときに聖川の世話になったからひょっとするとオレのために早く切り上げて帰ってきてくれたんじゃないか、なんてまたオレはどうやら熱で思考がおかしくなっている。そんなはずはないのだから考えるな。
「あ、聖川さん、キッチンお借りしましたよ」
イッチーが聖川に気付いて、オレが食べた粥を片付けキッチンの方へ向かった。
「あ…あぁ…」
聖川は珍しく返事の歯切れが悪い。




それは俺の役目だったのだがな

入学当初神宮寺さんが風邪ひいたときは聖川が看病してたけど、入学後暫く経ってSクラスが仲良しさんになったら、神宮寺の看病ができなくなってしまってちょっと寂しい聖川さんの没ネタ。

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