I love you?(藍嶺DEBUTネタ)
「ぼくが死んだら、博士はぼくをロボットにしてくれるかなぁ」

 二人きりしかいない楽屋で、椅子に座って大きく伸びをしながらレイジはポツリとそうこぼした。

「馬鹿言わないで。」

 次の出番に向けて鏡で己の姿を確認しながら鏡越しに返した言葉は、思いの外震えていた。

「でもさーそしたら可愛い可愛いアイアイだけ置いて、ひとりぼっちにしたりしなくて済むデショ?」

「は…?」

 ちょうどその時、楽屋でかけっぱなしのラジオが、大切な人を亡くして哀しみに暮れる女の歌を流していた。ボクはロボットだから、必ずレイジが先に死ぬ。そう言いたいのだろうか。

「だーかーらぁー。ぼくのロボットができたら、ぼくの事がだーいすきなアイアイを、幸せにしてあげられるのにーって」

 レイジはいつもの調子でそんな事を言う。気持ちもないのに。ボクは何度もレイジに「好きだ」と告げていたけれど、嶺二は必ず陽気な表情のままで「ごめんね」と言った。「アイアイの気持ちには応えられないよ」と。
 レイジはボクを通して別の誰かを見ていて、ボクはそれに気付きながらもレイジを好きな気持ちを変えられず、実を結ぶことはないと知りながら、何度も告白を繰り返している。馬鹿だ馬鹿だと思ってたけれど、どうすればそんな思考に行き着くのだろう。

「レイジが死んでロボットにしてもらったとしても、それはレイジじゃないじゃない」

「うんーそうだねー。」

「もしレイジのロボットがボクのこと好きになってくれてもボクは嬉しくない。今のレイジが好きで、今のレイジにボクのこと好きになって欲しい…」

「うんーそうだねー。」

 レイジの気が抜けるような気だるい返事を聞いて気付いた。なんだ、馬鹿なのはボクだ。

「…そういうことだよ」

レイジはにっこり笑って椅子から立ち上がると、ボクの頭を撫でて、楽屋を出ていった。




こういう時に人間は泣くのだろうか。



好きだよレイジ。



この気持ちがプログラムされたものでないと、どうすれば証明できるのだろう。

prev next









BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -