Short story | ナノ






とりあえず、何がムカついたかって?それはアレだよ。アレがね、もうね、分かるでしょ?


「というわけで、別れましょう。」

「いや、マジでごめんって。」

「別れてください。」

「嫌です、ごめんなさい。」


この問答が始まって早くも一時間も経過してしまった。

いや、確かに自分も潔癖すぎるかもしれない。たった一度の浮気で此処までするのもこの御時世おかしいのかもしれない。その上、分からなくもないのだ。あれだけ可愛い女の子が目の前に居れば、つい、なんて気持ちも分からなくもない。


「…やばい、余計にムカついてきた。」


納得できるだけに余計に腹が立つ。腹が立ちすぎて泣けて来た。


「……っ。」

「え、ちょ、あの…」

「…もう、嫌だ。何で、…嫌い、大嫌い。」


自分は悪くないはずなのに、どうしてこうもボタボタと涙が流れて行くのか。頼むから誰かどうにかしてくれ。


「!」

「…ごめん。」


涙を止めることに必死になっていたら、抱きしめられてしまった。誰か、とは言ったがアンタじゃないんだよ、コノヤロー。…て、ちょっと待て。


「…何で、泣いてんの?」

「ごめん。」

「泣きたいのは…」

「ごめん、泣かせてごめん。泣かせないように頑張るから。だから…」

「……。」


ごめんごめんばかり繰り返されて、訳が分からなくなってきた。

気づけば二人で泣き出して、気付けば訳が分からないことを言い合って、気付けば二人とも謝り始めて、気付けば眠ってしまった。


「…おはよ。」

「…おはよ。」

「……。」

「…デート、しませんか?」

「…うん。」


結局許してしまう私は何なんだ。

だって好きなんです

(はぁ!?浮気!?ちょ、いつ!?)

(だって、この前、ケーキ屋さんで…)

(あー…、ね。アレ、妹。)

(……え?)


拍手第一段


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