Short story | ナノ



01


女は鼓膜を揺らした言葉に思わず手を止めた。


「生まれ変わったら、君を好きになると思うか?」


掛けられた問を繰り返す。


「そ。」

「そうだねぇ…」


考えながら、作業再開。


「例えば6回生まれ変わるとして。」

「何で6回?」

「偶数であれば、他の数字でも構わないよ。まぁ、それはそれとして…、続けても構わないかい?」

「あぁ。」

「3.5回は君を愛し、2.5回は君を厭うだろうね。」

「0.5って?」

「君を厭いながらも、愛することだってあるから。」

「…そこは、全部俺を好きになるって言っておけよ。」


問うた男は不満げに声を上げた。

そんな男に漸く手を止めると、女は訝しむような表情で振り向いた。


「それは絶対に有り得ない。」

「……。」

「今出した答以上に非現実的な答は有り得ないよ。」

「今の答に一欠片でも非現実的な所があったか?」

「あっただろう?」


女は益々不思議そうな顔を浮かべた。


「君に関心を示さないという可能性を含んでいないじゃないか。」

「!」

「私らしくもない、非現実極まりない答だ。」

「何で…?」

「君が相手なら、それでもいいと思えたから。運命…、あるいは奇跡と定義しても構わないよ。とにかく、何時何処に生まれようと…」

「もういい。十分。」


男は咄嗟に制止の言葉を口にした。

現実的な思考回路の持ち主である女から紡がれるそれは、彼女らしくもなく非現実的だ。下手な睦言よりもずっと甘いそれ。例え夢がない言葉であっても、男には十分なものであった。


非現実的転生論

(あと一つ…)

(?)

(君に出会わない可能性も含んでないね)

(!)


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