02
私は小さい頃から体が弱かった。友達と駆け回るなんて夢のまた夢。そのせいで気も小さくなってしまった。そんな私は、まさに暇潰しの標的にピッタリだった。
庇ってくれる人は居ない。来る日も来る日も汚い言葉を吐きかけられ、苦い痛みを与えられた。
「私、泣いてたんだ……。」
枕に顔を埋めて泣いた。そうする他に痛みも苦しみも紛らわすことができる方法が無かった。
そして、彼女に出会った
「…じゃぁ、これは、夢?」
「正しくは、あちら側の君が見ている夢、だよ。」
「それじゃぁ……っ」
私は彼女を見た。
思えば、私は彼女をはっきりと見たことがなかった。見ていたのはその手だけ。聞いていたのはその声だけ。
「言っただろう?私は、"ワタシ"だって。」
「……そ、…うそ、…うそよ……。そんな…」
競り上がる恐怖。
目の前には、"私"が居た。
「コレが君の望んだ結末だ。もう二度と苦しむことはない。あんな場所に戻ることもない。耳を塞ぐ必要も、涙を流す必要もない。…まぁ、此処から出られないのだから、当然だけどね。」
「違う!私は…、私は、こんな…」
「大丈夫。恐がる必要なんて何処にもない。」
ワタシは甘い声で囁いた。
ずっと信じてきたその声に、再び安堵を感じることはない。ただただ恐怖が喉を締め付けるだけ。
「君は、私が守ってあげるよ。」
「いや!待って!行かないで!」
ワタシの姿が消えていく
「さよなら、"ワタシ"。今日から私が"私"だ。」
最後に聞こえたのは、鍵の音だった
心の檻から逃げ出して
(逃げ続けた先が)
(楽園とは限らない)
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