01
突然のことだった。
剣を手にした兵士が現れ、あっという間に辺りを囲んだ。訳も分からぬままルイヴィに出来たことと言えば、その背にリリーを隠すことだけだった。
「お兄様……」
「大丈夫。」
不安げに裾を握るリリーの手を握り返す。
「そう警戒するな。」
不意に聞き慣れた声が上がった。
兵が場所を開け、入って来たリリアが中央へと進み出る。
「リリア……」
「部屋を移すだけだ。」
「部屋を移す……?それだけのことに此処までするのか?」
「抵抗されると厄介だろう?」
「……抵抗?」
「運び出せ。」
困惑を深めるルイヴィに構わずリリアは兵士へと指示を飛ばす。それを合図に兵士達は部屋にあった家具を運び始めた。
「待て!説明くらい……」
「戦が始まる。」
『!』
「相手は、北。……ノーゼレスだ。」
『……っ。』
リリアの言葉に二人の表情が強張った。
いつかその日が来る。分かってはいたが、あまりに突然過ぎた。
「嘘、ですよね……?」
「言ったはずだ、嘘は言わない。」
「だって、私が黙っていれば……」
「言えばその瞬間に戦が始まる。そうは言ったが、戦をしないとは言った覚えはない。」
「……っ。」
震えるリリーの声をリリアは容赦なく切り捨てる。
あまりにも理不尽なその言葉にリリーは言葉を詰まらせ、怒りのあまりに手近にあった本をリリアへと投げつけた。
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