Queen | ナノ

01


リリアは机に置かれた封筒に笑みを深めた。


「全て揃った……。」


待ち望んだ知らせだ。

計画に狂いはない。準備も整い、兵力も十分に蓄えた。


「上手く行き過ぎて、怖いくらいだ。そう思わないか?」


傍らに控えていたギルベルトに問い掛ける。自分で言っておいて何だが、"怖い"なんて言葉が自分には恐ろしく不似合いに思えた。


「リリア、お前は……」

「ギルベルト。」

「……っ。」

「まだ終わっていない。」

「……申し訳ありません。」

「……そんな顔をするな。」


頭を下げるギルベルトにリリアは笑った。


「これは私の夢だ。」


もっと喜べ、そう付け加えて封筒を懐に入れる。

もうすぐだ。もうすぐでその日が来る。何年も待ち望んでいた日が。漠然としていた景色が少しずつ形となって目の前に現れ始めた。


「姫様!!」

『!』


突然、けたたましい音と共に扉が開いた。


「莢……?」


意外な人物に思わず目を瞬く。あまりに彼女らしからぬ行動だ。


「……何があった?」


努めて冷静に。

沸き上がる嫌な感覚に冷や汗が滲む。


「それが……」

「莢、焦らすな。」

「……北より、使者が。」

「北から?」


何故、この時期に。

病が収まらない今、彼女が連絡を寄越す理由はない。となると、他に何か起きたと言うことになる。


「……莢、まだ何かあるんだな。」

「はい……。城に……、城に、アズ様が……」

「!」

「……、姫様。」

「い、ま……、何と……」


リリアの顔が強張り、血の気が引いていく。

正確に回っていたはずの歯車が、此処に来て軋み出した。


「……っ。」

『姫様!』


二人の制止も聞かず、リリアは立ち上がり走り出した。


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