01
セントラレア帝国、かつてそう呼ばれていたその国は4つに分裂し、統一のためにそれぞれの国が火花を散らしていた。最初の闘争から早50年、北は西を、南は東を飲み込んだ。そして一月前、長き戦に疲弊した南の民衆が反乱を起こした。
「ひ……っ。」
石畳を叩く音が静かに響く。
まるで宣告を告げるかのようなその音に男は息を呑んだ。
「だ、誰だ……!」
「……。」
男の声に影は足を止め、にたり、と口元を歪めた。
それにさえ怯えをみせる男をサウゼレス国現国王であると誰が思うだろうか。
「き、きさ、貴様が首謀者か!?」
「その通りです、陛下。」
「……リ、……リリ、ア?」
男は影を脱いだ少女の姿に愕然とした。
「本当に、お前が……?」
「はい、陛下。」
少女は嫌みったらしい言葉と共に恭しく頭を下げた。
その姿が男の神経を逆撫でる。
「勝てるわけがない!東国を合わせた本隊が……」
「まだ気づかないのですか?」
吠える男に対して少女は笑った。
「全ては東を堕とす前から始まっていたのですよ。」
「……ま、さか……」
「直に東国軍が、本隊を押し潰すことでしょう。」
「………っ。」
男の背が震える。
全てが仕組まれていた。しかもそれがたった一人の少女によって。
「馬鹿な。そんな……、そんなはずが……」
逃げようにも縛られた手足が邪魔をする。
少女はその距離を詰めていた。ゆっくりと、着実に。
「何故だ!?何故だ、リリア!?お前は、実の父を……っ!」
「おさらばです、父上。」
少女の剣が男の胸を貫く
「輪廻の果てで、御会いしましょう。」
男の体が、石畳に転がった。
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