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01
城に戻ると朱雀に出迎えられた。
「お帰り。」
「あぁ。」
「上手くいったみたいだね。」
「当然だ。」
馬を降りて預け、服の裾を払う。
「あれ?誰か……、リコニさん?」
「あれー?」
「朱雀君?」
「ルピスさんまで……。」
連れ帰った二人を目にした朱雀がその目を瞬いた。
「……知り合いか?」
「え?あ、昔いろいろ教えてくれた人で……、でも、何で……?」
「拾った。」
「拾ったって……」
「二人の世話はお前がやれ。」
知り合いならば話が早い。リリアは一方的に役目を押し付けると二人の前に朱雀を押し出した。
久しぶりの再会のせいか突然のことだったせいか、何やら慌てているが自分には何も害はない。
「リリアさん!」
「!」
「おかえりなさい!」
「……リリー。」
声に振り返ると、人影が見えた。
「出迎えに来てくれたのか?」
「はい。」
「悪いな。留守中何か……」
「リリアさん?」
「……。」
リリーへと伸ばしたリリアの手が不自然に止まった。
指先が汚れている。砂や泥、挙げ句に血で汚れたこの姿はきついものがある。そう判断して手を止めたのだ。
「よかった……。」
「!」
リリアは引きかけた手を逆に引かれ、動きを止めた。
リリーがしっかりとリリアの手を両手で掴んでいた。その顔には安堵の色が浮かんでいる。
「怪我を、してるかもって……」
「……心配かけたな。ほら、汚れるだろう?」
やんわりと手を解く。
「私は易々と負けたりしない。」
「大した自信だな。」
「当然だ。」
リリーと共について来ていたルイヴィににんまりと笑って見せると、ルイヴィは呆れたように溜息を吐き出す。
城門前でこう長く留まるのも初めてではなかろうか。
「……っ。」
「リリアさん?」
「大丈夫だ。」
少しだけ気を緩めた瞬間、視界が回った。
「少し、疲れた。」
「では、莢さんに紅茶をお願いしておきますね。」
「頼む。」
視界が霞む。
恐らく出陣前の風邪が振り返したのだろう。自室までそれほど距離はない。せめて、自室に入らなければ。
「お前、顔色が……」
「問題、な……っ」
踏み出した足から力が抜ける。
『!』
リリアの身体が大きく傾いた。
「誰か……!」
リリーの声を最後に、リリアの意識は暗転した。
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