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01
追い詰められた盗賊を一瞥した後、リリアはレイシーに視線を移した。
「わざと見逃したな?」
「……。」
問えば、レイシーの表情が歪む。
見逃した理由は恐らく相手が義賊だったという事実があったからだろう。状況を見る限り、レイシーだけでも十分手に負えたはずだ。
「まぁ、いい。おかげで面白いものを見つけた。」
『?』
「あの弓。」
「弓が?」
「普通、矢は山なりに射る。あの矢はこの距離にも関わらず、水平に走っていた。」
つまり、それだけ速度があるのだ。寄せ集めの盗賊にそれだけの技術があるとは思えない。
「お前、まさか…」
「そのまさか、だ。」
「何かするのか?」
「ジン、お前の出番はない。」
「えー…。」
「レイシー、付き合え。」
「…仕方ない。」
リリアは手綱を引き、先頭に馬を進めた。レイシーが隊を小さく纏めて後に続く。
「取引がしたい。」
リリアの声が響く。
「このまま、終わりたくはないだろう?」
響く言葉に敵味方問わず、ざわめきが広がった。
「話を聞こう。」
同じく進み出てきた一人の男。
リリアはレイシーを待機させるとさらに馬を進め、距離を詰めた。
「この弓矢の考案者が欲しい。」
「俺たちを見逃すのか?」
「立て直す余地がない以上、お前達に用はない。」
数は極端に減ったはずだ。しばらくは派手に動けない。元々国交も途絶えかけている以上、全滅させて禍根を残すのも馬鹿らしい。
「どうする?」
「断る。」
「…だろうな。」
返答は予想していた通りだった。此処まで抵抗された以上、簡単にいくとは思っていない。
「ならば、こうしよう。」
「?」
「元々サウゼレスは弱肉強食の国。私の首を取れたなら、お前に王位をくれてやる。」
『!?』
「代わりに取れ無ければ、考案者は私が連れて行く。」
どちらにせよ、このままでは無事では済まない。悪くない条件であるはずだ。
「やろうぜ!」
男の隣に控えていたもう一人の男が声を上げた。
「だが…っ。」
「高いところから物言いやがって!ムカついてたんだよ!」
「待て!」
男の声も虚しく、剣は振り上げられた。
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