Queen | ナノ

01

 戦装束を身に纏ったリリアは腰に剣を据えた。見計らったかのように戸を叩かれる。


「入るぞ。」

「あぁ。」

「準備が出来た。」

「分かった。」


 リジーに急かされながら踵を返す。


「!」


 振り返る一瞬、視界が揺れた。

 バランスを崩した際に肘が積み上げていた本に当たり、本の山が音を立てて足元へ崩れ落ちた。


「どうした?」

「肘が当たった。」

「何をやってるんだ、こんな時に。」

「全くだ。」


 溜息を吐き出し、本に手を伸ばす。


「?」


 リリアの手は、宙を掻いた。


「本なら此処に……」

「すまない。」


リジーから本を受け取り、机に乗せる。


「まさか、お前……っ。」

「……。」

「動くな。」


 リジーの手が、リリアの額に伸びた。

 身を引こうとしたリリアだったが、肩を掴まれて動きを止めた。


「熱が……」

「何でもない。」


 額の手を払い、荷物を拾い上げる。


「ただの風邪だ。問題無い。」

「……。」

「行くぞ。」

「……分かった。」


 リジーは渋々引き下がり、自分の荷物を拾い上げた。合わせてリリアも自分の荷物を持ち上げる。


「……ほら。」

「?」


 リジーの手が、リリアに差し出された。

 訳も分からず訝しむ視線を向けると、その表情が苦虫を噛み潰したように歪んだ。


「持ってやると言っているんだ。」

「……何を?」

「それ以外に何がある。」

「珍しいな。」

「今だけだ。」


 リジーはリリアから荷物を引ったくった。


「御主人様と呼んでみるか?」

「調子に乗るな。」

「痛……っ。」


 調子にのり過ぎたらしい。足を踏まれた。


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