Queen | ナノ

01


 意識が浮上を始めると右手に熱を感じた。


「母上……?」


 ぼやける視界をゆっくりと広げる。


「リリアさん!」

「……リリー?」

「よかった……」


 目を瞬く。

 大分心配をかけたのだろう。リリーの目に涙が滲んでいる。


「そうか……」


 リリアは事態を把握し、半身を起こした。


「一体、何が……」

「もうお前達が襲われる心配はない。」

「どういうことだ?」

「……いたのか。」


 視線を動かすと、離れた場所に朱雀とルイヴィが立っていた。


「元から私が狙いだったらしい。おそらく向こうは死んだ。あの出血量なら、な。」

「服についていた血は……」

「いや、私を庇った奴がいる。」

「その方は……」

「……。」

「そんな……っ。」

「私の責任だ。」


 リリアはリリーの頭を撫でた。

 気にする必要はない。そう言ったところで彼女には無理な話だろう。


「姫様。」

「ん?」

「北より使者が……」

「……早く言え。」


 傍らに控えていたギルベルトに溜息をつき、布団を剥いだ。

 この時期に使者が来る理由は不明だが、一先ず着替えを済ませなければならない。少々億劫にも思えるが、仕方ない。


「まだ怪我が……」

「終わったら、また話をしに行く。」


 制止をかけるリリーの手を逆に制し、立ち上がる。


「ギルベルト。」

「はい。」


 ギルベルトが付き従う。

 そのまま出口へと歩みを進め、一度ルイヴィの前で足を止めた。


「すまなかった。」

「!」

「……。」


 ただ一言残し、リリアは部屋を後にした。


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