Queen | ナノ

01


 相手の心を掴んだ。そう思っていたルイヴィは目の前の二つのコップに眉を寄せた。


「やめてもいいんだよ?」


 向かい合う男が仮面に覆われていない口元をいやらしく歪める。二つの内、一つは劇薬。自分の好きな方を選べと言うのだ。


「何せ、命に関わるからねぇ。」

「……。」


 先の会話を振り返ってもかなりのやり手であると伺える。下手な言葉は自分の首を締めかねない。


「別にやめたっていいじゃないか。アンタにとってこの国は大切な国じゃないだろう?」


 何を迷うのか、男は笑みを深めて問うた。

 二人の間でリリーの分の取引は成立している。その薬を上手く使えば、リリアより優位に立つことも出来る。男もそれを承知で取引を持ち掛けて来た。


「じゃぁ……」


 男同様、ルイヴィは仮面に覆われていない口元に笑みを浮かべた。


「代わりに選んでくれないか?」

「ちょっと……」

「……。」


 控えていた朱雀がルイヴィの腕を引く。


「ダメだよ!」

「いいんだ。」


 焦る朱雀に対してルイヴィは柔らかい笑みを向けた。


「……本気ですか?」

「あぁ。」


 引き下がる気配はない。


「……まぁ、いいでしょう。」


 男は肩を竦め、手を宙にさ迷わせた。


「では、こちらを。」


 一つのコップを持ち上げ、ルイヴィに差し出す。


「……。」


 ルイヴィは小さく息を吐き出し、渡されたそれを一気に口に流し込んだ。


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