Queen | ナノ

01

 部屋に戻り表向きの会合を済ませたリリアは、ルイヴィを連れて別の部屋へと向かった。

 軽く扉を叩いて中に入れば、寝台に一人の少女横たわっていた。


「リジー、起きろ。お前は寝過ぎだ。」

「……何だ、騒々しい。」


 リジーと呼ばれた少女は寝台の上で小さく身を捩った。


「……誰だ?」

「リジーだ。一応学者として身を置かせている。」

「足枷の……」

「元奴隷だからな。とは言え、知の深さなら私を遥かに上回る。」

「リリア。」

「ん?」

「いつからお前はそんなに口が軽くなった?」


 リリアのお喋りが過ぎたのか、リジーが不満げに声を上げた。

 そんなリジーにリリアは悪びれもせずに笑う。


「主人を前にして礼を取らないお前が悪い。」

「普段は許すじゃないか。」

「客人の前だ。」

「じゃぁ、この男が例の……」

「あぁ。」

「へぇ。」


 リジーの視線がルイヴィに向けられた。


「……。」


 値踏みするような視線にルイヴィが眉を寄せる。


「悪くない。」

「当然。」

「それで?用件があって来たんだろう?」

「遠征に向かってくれ。」

「遠征?」

「盗賊退治。」

「……。」


 今度はリジーが眉を寄せた。


「朱雀が居るだろう?」

「代わりにコレの相手をしてくれるのか?」

「……ギルベルトは?」

「軍の調整中。」


 逃げ道はない。

 それでも返答を求めるリリアにリジーは不満を表情に滲ませるしかなかった。


「……分かった。」

「いい子だ。」


 リリアはリジーの返事に満足げな笑みを浮かべた。


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