Queen | ナノ

01


 時間と共にルイヴィの態度は軟化した。リリアのペースに呑まれたと言っても、間違ってはいないだろう。


「入るぞ。」

「……今日は早いな。」

「今日は時間を潰しに来た訳じゃないからな。」

「?」

「ついて来い。」


 リリアは碌な説明もしないまま、歩き出した。説明を求めたところで答えはしないだろうと溜息を落とし、ルイヴィも椅子から立ち上がると後に続いた。

 やけに静かな城内を足早に進む。

「朱雀。」

「大丈夫。」

「入るぞ。」


 中からの返事を待って、ドアを開けた。


「お兄様!?」

「リリー……?」


 思いがけない再会に二人の動きが止まる。


「医師は何と?」

「薬の回数を減らしていいって。」

「そうか。……いつまで入口を塞ぐつもりだ。」

「!」


 リリアは固まったままのルイヴィを容赦無く部屋に押し込んだ。


「今日から、此処で生活してもらう。」

『!?』

「嫌なのか?」

「いや、そういう訳じゃ……」

「大丈夫なのですか?」


 二人は困惑と不安をその顔に滲ませた。

 確かに、周囲は二人の接触を大分渋った。逃げられることはもちろん、兄にまで病が移ることを危惧するが故だ。


「もちろん、条件はある。」

「条件?」

「二日に一度薬を服用し、週に一度医師の診察を受ければいい。」

「……それだけか?」

「あと、大人しくしていてもらえれば完璧だな。」

「……。」


 含み笑いを浮かべれば、ルイヴィは居心地悪そうに表情を歪めた。


「安心しろ。今、此処はそれどころじゃない。」


 冴えない表情の二人に、欠伸を一つ。


「サウゼレスは、華国と戦中だからな。」


 リリアは肩を竦めた。


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