北の国へ2
「にしても、おめえと会うのも久しぶりだな!」
乗り継ぐ飛行機の搭乗口まで四人と連れ立って歩く。こっそり来たはずなのに、すっかり歓迎されてしまった。
「そうだね〜、今年の初め以来かな。みんな変わりない?」
デン君の言葉に同調して訊くと、彼らは口々に答える。
「俺らは特になんもねがったべ」
「んだな」
「まあ、不況っていう点ではどこも同じですから、変わりないですね」
フィンがちょっと笑うと、でも、と前をゆくデン君が振り向いた。
「アイスんとこは大変だったべ」
私には思い当たるところがあったけれど、その前にフィンがなんのことですか? と問う。
「ほら、でっけえ噴火があったじゃんよ」
「あぁ、あれは大変でしたよね!」
全員そういえばといった顔になる。
「西ヨーロッパの連中もだいぶ困っちょったべ」
私も、あれは今年のことだったかあ…と思った。時がたつのはあっという間だな。
ってことは、その噴火があってから会うのは初めて、なんだ。
「んだら励ましてやんねとな」
私の心の内を見透かしたようなスーさんの言葉に、私はちょっと動きが止まった。ケプラビーク行きのフライトの搭乗手続き開始のアナウンスが流れる。
「うん、そうだね」
本当は、自分が励ましてもらいたくて来たのだ。
遠く離れた極寒の地に棲む彼に温めてもらいたくて。
やっと、旅行する余裕ができて、だからこんなクリスマスも間近の寒い時期にアイスランドで行こうなんて思った。きまぐれの行動だったから、こっちの誰にも知らせずにきた。
「……あ! ねえもしかしたら、私がこっち来ることイースも知ってる?」
私はふと気づいて四人を振り返った。
「まっさかそんなもったいないことことしねえ! 突然行って驚かしてやれ〜」
にんまり笑ったその人が輝いて見えた。
「デン君さすが…っ! だから大好きなんだあああ」
思わず抱きついた私の頭をノル君がぺしんと叩いた。
「そんなとこ、もし見られたらマズいんでねの」
「大丈夫、大丈夫。でもほんと、ノル君て実は弟思いだよね」
私が笑うと、彼はその弟が「意味わかんない」と無表情で言い放つときとよく似た目をしていた。
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