こんな日くらい、はしゃいじゃいけませんか



「 Trick or Treat?! 」

飛びついた私に彼はぐらりとよろめいた。そしてすぐ怪訝そうな顔をして、何だその格好はと言う。

何だとは何だ。私は怒って声を張った。

「これがシンデレラに見えないんだったらあなたの目は節穴ですね」

しかし彼は溜め息をつく。

「俺が言ってんのはそんなことじゃねえよ」

「どういうことですかっ」

「お前今年で何歳だ?」

「16ですけど」


義務教育終了は私にとってひとつの突破点だったので、16歳とは割と胸を張って答えた。


「つまりな、16歳でその格好はなんだって言ってるんだ。分かるか?」

明らかに馬鹿にした口調になったことに気づいて私は、分かりません! とやけになりつつ言った。

「だって今日はハロウィンじゃないですか! 仮装してお菓子ねだって何が悪いんですかっ」

「それは子どものやることだ!! 普通15かそこらのお前くらいのやつは“仮装してお菓子ねだる”子どもの引率するもんだ」

「そんな異文化知りませーん」

「結局子どもだな、お前は」



ああ、まただ。

悪いのは、私だと分かっていた。けれど。


いつになっても追いつけない絶対の歳の差を、私がこんなにも恨んでいることをこの人は知っていて、私を子ども扱いするの。



「また子どもって言いましたね」

俯きながら私は言った。こうやって反論してしまうことも、やっぱり子どもじみているのだろうなと自己嫌悪に陥る。

けれどもう言ってしまったことは取り消せない。黙りこむしかなかった。


「あぁ、悪い」

彼は目を泳がせながらも謝ってくれる。

「けどお前ももう少し大人になる努力をしたらどうだ」

「…っ、してます!!」

また声を荒げてしまう。でも、でもっ……悔しい!

「アーサーさんはっ、私を大人として見る努力してるんですか! ほんとはあなたが私に子どもでいてほしいだけじゃないんですか!」

一気に言ってから距離を縮める。頭半分上の狼狽えた瞳を捉えた。



「もうお菓子なんていりません。いつまでも子ども扱いしないでください」



言い終えた途端、それはもう鮮やかな一瞬のキスを落とされた。


「……!?」

「今はそれで我慢しろ」

「えええどういうことですか!?」

「分かれ、ばか」

「ば、馬鹿って酷くないですか」

「ばかにばかって言ってなにが悪い」

「開き直りますか!」

「しかしよくそのサイズの衣装があったな」

「ちょっと話題変えないでください! っていうか私そんな太ってないですから」

「…へぇ?」

「なんですかその品定めするような目はっ」

「大人として見ろって言ったのはお前だぜ」

「それじゃただの変態です」

「お前っ」



絶句した彼のくしゃりと笑った顔が眩しくて、やっぱり好きだなぁと思ってしまう私はそろそろ末期かもしれない。


END










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