その理由は翌日、比較的あっさりと明らかになった。グリフィンドールとスリザリン合同の、魔法薬学の授業の最中のことだった。

 いつもと変わらずグリフィンドールの馬鹿ども数名が騒ぎ立てていて――簡単に言ってしまえばつまり、かの悪名高きジェームズ・ポッターがリリー・エバンズに(いつもどおり)しつこく絡んでいたのだが、普段はそれをちらちら盗み見ている誰かさんが、今日は至極苛立った様子で手元の作業に没頭していたのだった。乱暴に扱われた材料が数個床に散らばったが気にすることもなかった。

 それを見て私は思い出した。あの、ふくろう試験が終わった日のことを。

 私もあの場にいたのだ。止めに入ることだってできた。ただ、臆病だったのだ。

 悪乗りしたポッターとブラックを制止したのは、あのリリーだった。あの。

 一部始終を見ていた私は、リリーとセブルスが口論したことも知っていた。

 当然とも思えた。うっかり出てしまった言葉は、私にとってそれほど重要ではなかった。
 私の育った環境も、その差別ともいえる区別を、何の疑いもなくするところだったから。

 けれど、彼女がそれをどう受け取るかも容易に想像できた。



 そこで昨日の出来事が結びついた。昨夜、彼はきっと謝罪にいったのだ。でもいくら謝ったところで彼女の傷もそう簡単には癒えないだろう。たぶん、しばらくは。



 なんだかんだ、お似合いだろうと思うのにな、あの二人……。



 そう思ったところで、私の手が止まった。薬はもうほとんどできていた。しかし、目の前で鍋の中に落ちる謎の液体が薬の色を変えていく。それが何なのか理解するのに数秒かかった。



 涙だった。


‐3‐







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