ぼんやりしていると彼の後ろ姿を思い出してしまって仕方がありません、と柳生比呂士は自嘲の笑みを浮かべた。傍らに立つ真田はただ黙って耳を傾ける。横やりを入れてはいけない。そう感じていた。


「分かってはいるんですよ?これは私のエゴです。我が儘です。あれだけ彼を拒絶しておきながら、いざ一人になると彼を求めているのですから」


ぐっ、と目の前の男の拳に力がこもるのを真田はしっかりと見た。


「でも悔しいじゃないですか。私はこんなにも彼だけを見ているのに、当の本人はそうではないなんて」
「だからあいつを拒むのか。己だけを見てほしいがために」
「彼は貪欲ですからね。困難なほど必死になる傾向があります」
「…柳生」
「どうしましたか?真田くん」


いい加減素直になったらどうなんだ。そう言葉を投げようとして、真田はそのまま口を閉じた。そんな真田の行動をさほど不思議がることもなく、柳生はそっと微笑む。分かってますよ、真田くん。紳士は静かに窓の外へと目をやった。


「いつになったら私は…」


颯爽と隣を駆け抜けていった風に、柳生の言葉は連れ去られた。



- - - - - - - - - - - - - - -
愛する仁王くんに振り向いてほしくて素直になれない柳生さんと、いい加減素直になれよと思っている弦一郎くん(15)。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -