「おい、リーオ!」
こっちに来てみろよ、と笑う少年。普段は何をそんなに怒る必要があるのかというほど顔をしかめている彼が、珍しい。そんなことをぼんやり頭の隅で考える。
「わあ…」
言われた通りに隣に立って、思わず声を洩らす。
街は、光の海の中にあった。
赤、青、黄、緑。その他様々な色が街中を包んでいた。これだけ光っていれば眩しいはずなのに、不思議とそうは感じない。イルミネーション。昔読んだ本の中にあった単語が浮かぶ。自分には全くの無縁だと思っていたものが、今、目の前にある。
「綺麗だろ?」
「うん。僕、初めて見た」
「だろうな」
『お前に見せたいものがある』
突然そう告げて手を引いてきた横顔もまた眼下の光に照らされている。ああ、綺麗。心の内だけでそう呟く。
「気に入ったかよ?」
「まあね。エリオットにしては珍しく素敵なものだね」
「うるせえ!…また来年も見に来るぞ」
「うん!」
視界に映るのは暗闇。わずかに窓の外から漏れる光に照らされたシャンデリアは、まるで先程のイルミネーションのように煌めいている。一人で使うには大きすぎるベッドの真ん中で、リーオはただぼんやりそれを眺める。
「…エリオット」
イルミネーションに照らされた友人の顔が目蓋の裏で揺れている。まばたきをすれば一筋の雫が大きな瞳からこぼれた。
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季節外れとか禁句。
時系列がおかしいも禁句。
色々気にしちゃ負けです。