「仁王、分かっているな?」
「………」
「まったく…たるんどる!」
「お待ちください!」


立海名物・真田弦一郎による鉄拳制裁。粛々と行われていたそれを遮る声が乱入したのは突然の出来事だった。驚きに動きを止めた真田の前に現れたのは、眼鏡がきらりと光る紳士――柳生比呂士だった。


「柳生?どうした?」
「どうしたじゃありません!仁王くんになんてことをしようとしているんですか!」
「は?」


ひどい剣幕で突っかかる柳生に、真田だけでなく遠巻きに見ていた部員も、ぽかん、と間の抜けた表情をする。真田の鉄拳制裁は今に始まったことではない。それはこの紳士も分かっているはずだ。それでは、何故?


何処かの名探偵よろしく、柳生の指が真田を捕らえる。


「真田くんの!そのような馬鹿力で!華奢な仁王くんの頬を叩けば!どうなるかはお分かりでしょう!?」
「柳生…!」


そういうことか、と野次馬たちは一様に同じ表情を浮かべる。ピンチに颯爽と現れたヒーローに感動する仁王。今回の制裁の相手だ。怒れる紳士はおそらく、いや、確実にあの詐欺師が原因だ。


「し、しかしだな柳生。仁王は試合に負けたのだ。負けたら制裁を加えなければならん。それがこの部の掟なのは柳生も知っているだろう?」
「…そこまで言うのなら、分かりました。私にも覚悟はあります」


柳生の怒る理由をいまいち理解していないであろう真田の言葉に、柳生は拳を強く握る。思わぬ不穏な空気に、もしかして、と外野に焦りの色が生まれる。このままだとヤバいっスよ!おい、誰か柳生を止めろ。分かった、俺に任せろぃ!ってジャッカルが。俺かよ!?


ざわざわと騒ぎ出す仲間に耳も傾けず、紳士は握った拳を振り上げ、そのまま皇帝と呼ばれる男の頬へ。


「私が、仁王くんの代わりになります」
「なっ…!」
「柳生!お前!」


とは、いかなかった。握られていた筈の拳はいつの間にか解かれ、紳士が提案したのは自己犠牲だった。意外な結末に動揺を隠せぬ皇帝、そして観客に目も暮れず、紳士は真っ直ぐにパートナーを見つめる。慈愛に満ちた表情に、仁王は首を横に振る。そんなの俺は認めん、と叫ぶ詐欺師を、しかし紳士は許さなかった。その姿はどこまでも強く、どこまでも優しい。


「仁王くん、私なら大丈夫でぐふう」
「真田。いいから早くやっちゃって」
「やぎゅううううううう!!!」



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神の子って恐ろしいですね。
(後日談:H.Y)

なんでこんなのを書いたのかは不明。馬鹿ップルが書きたかったんですね、たぶん。あと一応28です。



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