叶わない恋だということは出会ったときから分かっていた。仲睦まじく話す二人を見る度に、そして周りが囃し立てる度にそれを痛感していた。
だからこの気持ちに見切りをつけたかったんだ、と妹子は自らに言い訳をした。
「閻魔先輩が、好きです」
妹子は知っていた。この言葉を告げればどんな答えが返ってくるのかを。そして優しい彼がどんな気持ちになるのかを。全て知っていて、妹子は告げた。もしかしたら、という望みが心の何処かにあったのかもしれない。
驚きのあまり大きくなる瞳。赤いそれは林檎のようで、食べてしまいたい衝動にかられる。
「……ごめんなさい」
大きく開かれたはずの瞳は、次の瞬間には泣き出しそうに歪んでいった。拒絶の意を示すかのように頭を下げられる。ぽっかりと心に穴が開く。そんな音が聞こえたような気がした。けれど、不思議と涙は出なかった。
(ああ、やっぱり…)
優しい人だ。彼の涙はきっと自分に向けられたものだろう。誰よりも他人が傷つくことを恐れているのだ。出来ることなら泣かせたくはなかった。
(だけどこうでもしないと、気にくわないじゃないか)
自分はこんなにも好きなのに、相手は気づきやしない。一心不乱に恋人だけを見つめる横顔に何度拳を握っただろうか。悔しかった。あの男に勝てないことが。だからぶつけた。己の想いを。それが無駄な行為だということは分かっていたけれど。
去っていく背中を妹子は黙って見送った。きっと今は自分のことで頭がいっぱいに違いない。そう考えると言い様の無い優越感が湧いてきて、ざまあみろ、と憎い男に吐き捨てた。
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分かりにくいけど学パロ。
想いを抑えられなかった妹子。