不意に初めて彼に会ったときのことを思い出した。親が用意してくれたレールをただ突き進んでいた私の前に、突如現れた彼。


『お前さん、柳生比呂士じゃろ?』


嬉しそうに笑った顔がやけに印象的だったことを、今でも鮮明に覚えている。


閉じていた目蓋を開く。目の前にはやはり彼がいる。だけど私の記憶の中の彼とは違った。白い肌、さらには衣服に点々と散った紅。おそらく聴き手であろう左手に握られているのは無機質な黒。そして、私を見つめる瞳はひどく揺れている。まるでそれは隠し事が見つかってしまった幼子のようで。


「や、ぎゅ」


なんでお前さんがここに。きっとこんな心境なのだろう。そんなこと、私の方が聞きたい。何故、仁王くんがここにいるのですか。何故、そんなに血まみれなのですか。何故、君はそこに横たわっている人を撃ったのですか。何故、何故?


「…今の、見たんか?」
「………」
「…お前さんには見られとうなかったんじゃがな」


ふっ、と笑ったその顔は、いつもの嬉しそうな笑顔とは違う。でも、私には今の彼の表情の方が酷く好ましく思えた。



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仁王は殺し屋で柳生は一般人。



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