目の前の赤髪を指ですく。ふわふわと毛先のはねたそれは柔らかい。
「仁王」
「ん?」
「くすぐったい」
「プリ」
僅かに身を捩りながら丸井は不満を洩らした。しかし止める気などさらさら無いらしく、なおも指は赤の中を行ったり来たりしている。障害無く通る指が心地良い。毛先をくるくると弄りながら、切れ長の瞳が満足そうに細められる。
「仁王!」
いい加減にしろ、とでも言わんばかりに丸井は仁王を睨む。同時に自分の頭に伸びていた手首を掴む。ぐっ、と力を入れてしまえば折れてしまいそうなほど細いそれは、とてもスポーツをする者のようには思えない。
満足そうだった瞳が、今度は不服そうに細められる。
「なんじゃ。不満か?」
「くすぐったいっつってんだろい!」
「つまらんのう」
渋々と言った形で仁王は掴まれた手首を振る。しっかりと握っていたはずの手はいとも簡単に振り払われてしまった。一体この細い腕のどこにそんな力があるというのだろうか。女の、というわけではないが、それでも男にしては細すぎる腕。日に焼けにくい肌と相まって、ひどく不健康そうに見える。
この腕から数々の強いショットが放たれるのが、丸井には不思議で仕方がなかった。
「そんなに髪が好きなら自分のでも触っとけよ」
「自分のなんか触っても何も楽しくないぜよ」
「俺の触ったって楽しくねえだろい」
「ブン太の髪はふわふわやからずっと触ってたいんよ」
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ニオブンがほんのり来てます。
本誌でブンちゃん大活躍ですね。