差し出された手を躊躇うことなく握る。温かく大きいそれは、ずっと望んでいたものだった。羨ましかった。両親からの愛を一身に受ける彼女が。両親をただ純粋に愛する彼女が。








そっと目蓋を開ける。視界に映るのは窓から入ってきている西日。そして、ソファーに腰かけた一人の少女。


「…ここで何をしている」
「あ、起きたの?」
「何でここにお前がいるんだ」
「勝手に入ってごめんなさい。ノックしても返事が無くて、それで見てみたらノヴァが寝てたから…起きるまで待ってよう、って思って…」
「僕に用か?」
「うん。この書類を渡してくれ、ってダンテに頼まれたの」


はい、と出された書類を受けとる。どうやら知らない間にうたた寝をしてしまっていたらしい。


「それなら起こせばいいだろう。時間の無駄だと思わないのか?」
「だってノヴァ、あまりにも幸せそうな顔で寝てたから」


書類に通しかけていた目をフェリチータに向ける。


「何の夢を見てたの?」


先の光景が甦る。温かい空間と穏やかな時間。もう戻らない昔の思い出。と同時に、沸き上がる羨望と嫉妬。羨ましかった。自分に無いものを持つ従姉妹が。


「…お前には関係無い」


二つの感情でぐちゃぐちゃな今の自分の顔を見られたくなくて、ただ下を向くことしか出来なかった。



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ノヴァが両親を目覚めさせる前の話。



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