「正直な話、俺さ、いけると思ってた」
「脈でもあったん?」
「まあな。だって普通クラスが離れたのに喋るか?男子ならともかく女子だぜい?」
「ブン太やったらありえん話じゃないと思う」
「んだよ、ちくしょう!」
ガン、とテーブルに額をつけるのは丸井ブン太。只今絶賛傷心中。原因は失恋。しかも今日。何でも偶然見かけて話しかけたら相手は彼氏を待ってたとか。俺がなかなか部室から出てこないこいつの様子を見に行ったときは既に半泣き状態だった。まあ気持ちは分かるぜよ。
で。現在俺らがいるのは俺の部屋。理由はもちろん俺の優しさナリ。
「だいたいなんでお前はそんなにモテるんだよ。腹立つ!」
「まさかのここで俺に八つ当たりか」
「あー、腹立つ。こんな男のどこがいいんだってんだよい。俺の方が百倍男前だっつーの」
「うんうん、ブンちゃん男前ー」
「てめえ殴るぞ」
ガン、ともう一度額を当てる。かと思えば続けて何度もガンガンガンガン。おかげで傍らのコップ(オレンジジュース入り)が今にも倒れそうだが、俺は知らんぷり。そのままぶっかかってしまえ。
しばらく続けていたかと思えば、突然ピタリと停止。残念ながらジュースはかからなかった。
「本気で好きだったんだけどなー…」
ボソリ、と呟いた声はいつになく小さかった。額をつけているからもちろん顔はこちらからは見えない。今、ブン太はどんな表情をしているのだろうか。悔しがっているのか、それとも悲しがっているのか。正直そういう経験が無い俺には分からない。
ただ一つ、言えることは。
「何はともあれお疲れ様、じゃ」
ありがと、とくぐもった声が返ってきた。
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いつかの作品の後日話、みたいな。
読み返したら書きたくなったのです。