風が強い日は必ず決まって岳人は外に出たがった。理由は実に単純明快。岳人は風が好きだから。


そしてそれはもちろん今日も同じだった。


「気持ちいー!」
「どこがやねん!」
「何だよ侑士!不満でもあんのかよ!」
「髪の毛ボサボサなるわ、風強すぎて寒いわ、不満しかあらへんやん!」
「普段からボサボサなんだから別にいいじゃん!」
「やかましわ!」


あはは、とそれはそれは楽しそうに笑う。本当に風が好きなのだろう。毎度毎度付き合わされる方の身にもなってほしい。強風で普通の音量では隣に居ても聞こえないから、大声を出して喉はすっかりガラガラになっている。


「侑士ー!」


外に出たときよりも確実に風は強くなってきた。どこか手頃な場所は無いかと探す俺の隣で、岳人は大声を出し始めた。それも俺の方ではなく前に向かって、だ。俺の喉は最早悲鳴をあげていて同じように答えることは出来ず、小声で相槌を打つ。聞こえなくても仕方がない。


「なんや?」
「あのなー!俺なー!」
「うん」
「侑士のこと、大好きー!」


ぴたり。そんな音が聞こえるかのように俺の体は動きを止めただろう。岳人の方を見れば岳人もこっちを向いていて、目が合えばにっこり笑った。俺はなんだか気恥ずかしくなって、傍らの恋人を抱き締めた。ああ、もう。ほんまに可愛いな、こいつ。



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甘いのを目指しました。



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