「どういうつもりぜよ」


更衣室に入るや否や幸村に投げ掛けられた言葉は、鋭い棘を含んでいた。向けられた突き刺さる視線には敵意が滲み出ている。


「何がだい?」
「とぼけるんじゃなか」


バンッ、とロッカーが形を変える。赤也が壊したところが直ったばかりなのに、また真田に怒られちゃうな。頭の片隅が場違いなことをぼんやりと考える。


「なんで柳生じゃなくて俺なんじゃ」
「………」
「あいつの方が俺より強い。なのに!」


ひしゃげた扉に当てられた拳がきつく握られる。幸村は静かに仁王から目線を反らした。


「確かに柳生は強いよ」
「じゃあ、」
「でもね仁王。俺はお前が弱いとは思ってないよ」


反らした目線を元に戻す。バチン。見開かれた金色の瞳と視線がかち合う。


「お前は十分強い」
「…詐欺師に嘘つくとはいい度胸ぜよ」
「嘘だったらね。だけど生憎これは嘘じゃない」


固まったまま動かない男の横を通りすぎ、目当てのものを手に取る。そしてそのまま引き返し、取っ手に手をかけたところで立ち止まる。一つ、息を吐く。


「ねえ仁王。お前は柳生に負けたままでいいのかい?」
「………」
「ここの掟が何だったか忘れたなんて言わせないよ?」
「………」
「それでもまだ不満があるならいつでもおいで。その時は考えてあげるから」


何も言い返せず立ち尽くす詐欺師を残し、幸村はその場を後にした。



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青学戦のオーダーを聞いた後の詐欺師と神の子。
色々矛盾があるけど気にしない。



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