誰かに呼ばれて柳生は体ごと後ろを向く。やあ、と軽く片手をあげるのは自分たちにとって絶対的な存在。


「幸村くんでしたか」
「ごめん、邪魔したかな?」
「いえいえ。ぼんやりしていただけですから大丈夫ですよ」
「何を見ていたんだい?」
「これです」


女性に席を譲るかのごとく洗練された動きの先には黄色の花。そこかしこで姿を見かけるそれは小さいながらも確かな存在感を持っている。例えるなら、この青空で燦然と輝く太陽のようだ。


「タンポポか…。確か真実の愛、思わせぶり、それから、」
「別離」


まるで私と仁王くんみたいでしょう、と自虐気味に笑う紳士の瞳はいつものごとく眼鏡の奥に隠されている。幸村は何も言わず柳生の横を通りすぎ、小さな太陽の前でしゃがみこんだ。


「柳生、一つ忘れてる」


そして再び立ち上がり、柳生に右手を差し出した。


「神のお告げ。お前たちはまだ終わらないよ」


その手には先ほどの小さな太陽がしっかりと握られていて。唖然とする紳士に神の子はにっこりと笑いかけた。



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タンポポ(真実の愛、神のお告げ、思わせぶり、別離)

神の子による神のお告げ。



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