彼は泣いていた。大きな両の瞳からぼろぼろと大粒の涙を流しながら泣いていた。お願い、と震える唇が動く。すん、と鼻を啜る音が小さく響く。お願い。


「オレを受け入れてよ」


震えながら紡ぎ出された懇願の声。死の世界を統べる彼は本当に神なのだろうか。神で良かったのだろうか。そう思ってしまうほど、彼の行動は人間味を帯びていた。


ああ、そういえば。ぼんやりと記憶の片隅に残る知識を拾い上げる。彼は限りなく人間に近い神だった。完全になりそこねた出来損ない。彼が自嘲気味に笑ったのはいつのことだったか。


きゅっ、と控えめに強く裾を握る指に血の気はない。不完全で不安定な神様は何が悲しい?哀しい?


「なかったことに、しないで」


否定を、拒絶を恐れた神様の呟きは、信じる者の少なくなった下界には、もう、届かない。



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科学の導入と引き換えに宗教への信仰心が薄れてしまった現代人と、いずれ来る死が怖い閻魔と、どうすることも出来ない鬼男くんの話。



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