「お前って本当に岳人のこと好きか?」


俺からの突然の問いにまず返ってきたのは呆気に取られた顔。おそらく飲もうとしていたであろうスポーツドリンクを中途半端な位置に固定し、ポカン、とした表情のまま動かない。仮にもポーカーフェイスがこの様。激ダサ。


とはいえ動きを止めていたのはわずかの間で、すぐに立ち直った忍足は、とりあえず手に持ったスポーツドリンクを飲んだ。口からペットボトルを離すのと同時に、唇が動く。


「なんでそんなん聞くん?」


先程の動揺はどこにいったのか、今ではもう普段の見慣れた顔つきに戻っている。気になったから、と言えば、なんやそれ、と苦笑される。


「ちゃんと好きに決まっとるやろ」
「ふーん…」
「なんや、信じてへんの?」
「いや、そうじゃなくて。そのわりには変わんねえな、って思ってよ」
「何が?」
「岳人に対する態度と俺らに対する態度」


本当の話だった。俺が今話しているこいつは人に執着しない。どこかふわふわとしていて、根無し草を連想させる。もちろん俺らテニス部のことは仲間だと思っているだろうし、それ以外にも学校の奴らの中にそう思っている奴はいるだろう。それでも、決して固執はしない。いつも一歩引いたところにいる。


それは、岳人に対しても一緒だった。


「まあ、別にいいけどよ。ちゃんと好きだってんなら俺が首突っ込む必要もねえし」
「………」
「あ、侑士!」


無言のままの忍足の元へと走ってきたのは俺の幼なじみ。そして氷帝の天才の恋人。付き合いが長いはずの俺の方なんか見向きもしないで、目を輝かせて自分のパートナーだけを見ている。呼ばれた方も呼ばれた方で、きっと俺のことは忘れてしまっているに違いない。邪魔なんて野暮な真似はしない。そんなことをするのは激ダサな奴だけだ。だから黙ってその場を離れる。


岳人が来なければ放り出していたであろう言葉を唾と一緒に飲み込む。あいつには必要ない。そう、確信したから。


それぐらい、岳人を見つめる忍足の目は優しかった。



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「岳人を傷つけたら許さねえ」
って言いたかったけど、そんな言葉が必要ないぐらい好きだと分かった宍戸さん。

侑士はたぶんがっくんに対してもあまり干渉しないと思います。



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