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shortよりも短いお話、ふと書きたいと思ったお話などを載せています。
お題配布元: 確かに恋だった

それもいいかもな / 佐川


愛していないくせに、ウソをつくのは何故。その場の雰囲気作りか、はたまたその時だけは愛していたと言う都合のいい理由か。

貴方が他の女の残り香を付けて私の元を尋ねる度に、私は嫉妬で狂いそうになる。そんな私を見て、愉しそうにする男はつくづく悪趣味だと思う。それでも我慢できたのは、あくまでも彼が私のところに帰ってきたから。


ある日、街を歩いていたら、見慣れた後ろ姿が目に入った。彼と会うのは夜しかなかったから、いつもと違う場面に気分が高揚したのは事実。彼に声をかけに行こうとした瞬間、他の女が、ずっと私よりも綺麗で、私と違ってちょっとのことじゃ嫉妬しなさそうな寛容な女が彼に抱きついて、キスをした。



人間の衝動は怖い。

すぐさま私は彼の元へ行って、彼を刺したのだから。
叫ぶ女と刺した人物が私と気づくなり、驚いた表情をする貴方。その驚きは私が刺したからだろうか、それとも女とのツーショットを見られたからか。もう聞くことも出来なさそうだ。

まあ貴方の最期が私で終わるなら、それもいいかもな。



「って言う夢を見ました」
「お前、怖いよ。流石に鳥肌立ったぜ」
「私だって見たくて見たわけじゃないんです。リアルすぎて、起きたときに司さんが横にいてびっくりしたもん」
「寝起き早々、聞かされる立場にもなってくれ。いきなり道端で都合よくナイフなんか出るわけねえんだから、夢って気づけよ」
「それどころじゃなかったんです。…でも気をつけてくださいね、正夢にしないように」
「はぁ……しねえわ…できねえわ」

2023/08/29

筋書き通りの嘘を、 / 真島


「神室町で、眼帯といえばこの男だ。すぐに見つかるだろう、サクッと頼むよ」
「これで本当に最後ってことで。いつも通り、私は手下さないんで」

「真島さん!また、お会いできて嬉しいです!」
「お、仕事終わりかいな?お疲れさん」
「ありがとうございます、私も同じお酒にしようかなぁ。それ、美味しいですか?」
「飲んでみ、そんな強ないで」


「そんな強ない言うたんワシやけど、見いひんうちに飲みすぎや」
「…ほんと、ごめんなさい…」
「気持ち悪ない?大丈夫か」
「真島さん……私、…こんなときに言うことじゃないんですけど、やっと二人きりになれたから…」

「好き、って言ったら、ご迷惑ですか?」

従順で無垢な女を演じたから、あとは筋書き通りに言えばお終い。どうせ、頭なんか使えず、本能でしか動いてないんだろうから。

「……ワシも好きやで。」



「せやけど、まず裏におるん誰か教えてもらわな、これからお互い大変やでぇ。障害は燃えるいうても、いつ殺られるかでさすがにワシも興奮できひんわ!」

2023/08/19

突き放して、忘れさせて / 真島


「ごめんなさい、私、吾朗さんとはやっていけない」
これは嘘。貴方じゃないと満足できるわけがないと思うから。

「そもそも、やっぱり、住む世界が違いましたよね。私たち」
これは本当。でも、住む世界が違っても、貴方も私もお互いに行き来できたんだから、関係ない。私たちなら、きっと、天国と地獄の間で逢瀬を楽しめるかも。そもそも私が地獄行きだったら、これは杞憂に過ぎないけど。

「もし私に好きな人ができたら、尊重してくれる、って前に言ってたじゃないですか。もし、あれが本当なら別れてほしいです」
これは大嘘。貴方を知ったのに、この先、好きな人なんか出来るわけない。それに絶対、私から『別れてほしい』なんて言うつもりなんてなかった。

 勝手なのは百も承知。でも、最後にどうか、私の言葉なんかで、そんな顔をしないでほしい。

2023/08/18

貴方なら怖くない / 真島


「ワシがある日死んでしもたら、どないする?」
「嫌な質問ですね、縁起でもない。」
「起こらんとも限らんやろ。死んだら、お前が悲しんどるんか笑えてんのかわからんのやから、先に聞いとくんや。」
「また意味不明な理論で。…どうかな、一ヶ月くらいドン底に落とされて、その後は案外ケロッとしてるかも。」
「ケロッとか、薄情な奴やな。化けて出るで。」
「化けて出てくれるなら本望ですよ。」
「…ほな、出たるわ。」
「あ、でも、その時に他の男性といい感じだったら二人きりにしてくださいね。」
「おい、なんや、男作る気なんか?」
「吾朗さんがいなくなったら、作っちゃうかも。…嫌だったら、ずっと生きて、私の側で見張ってなきゃ駄目ですねぇ。」

吾朗さんは顔を顰めて、口を尖らせている。

 変な質問と縁起でもないことを想像させた罰だ。危険な世界から身を引いてほしいと泣いて懇願して困らせたりはしないから、せめて貴方に“生きること“に執着してほしいのだ。

2023/08/15

キスひとつで終わる関係 / 西谷


「頼むわぁ、一回でええねん、誉ちゃんにサヨナラのキスしたってぇ。」
「もう!いつも誉ちゃん、一回って言うじゃないですかぁ!」
これも仕事のうち、しかも太客、と思いながら、頬にキスをし、この厄介な客を帰らせる。別に、西谷誉という客が嫌いなわけではない。金はちゃんと落とすし、スタイルも顔もまあ良いし、なんかいつも無駄にいい匂いがするし。ただ、お触りが過ぎるのが厄介なのだ。だけど、まあ、頬のキス一つで満足してもらえるならば容易い。
 ある日の深夜、煌びやかな世界とは無関係そうな、黒縁メガネに、ノーメイク、Tシャツ、ジーンズの完全にオフな姿でコンビニを訪れた。唯一の私の癒しである、缶ビールがないという大事件が起こったからだ。ありがとうございましたー、という店員の伸びやかな挨拶をあとに店を出ようとするとトントンッと肩を軽く叩かれる。はい、と振り向こうとすると、誰かの指で頬がぷにっと押される。振り向きたいのに、その指の力が強すぎて振り向けずに、その人の顔は死角に入る。
「なっ、なんですか!誰?!」
「…こないなとこで会えると思てへんかったわぁ!一週間分の運、全部使てしもたかもしれへん!」
「……げっ!」

 嘘だ、何故こんなところで会うというのだ。全く蒼天堀とは関係のないエリアだというのに。そして、貴方は私がすっぴんなのに、何故『私』だとわかる。貴方とは、あの煌びやかな世界で、あのキスひとつで終わる関係でよかったのに。

2023/08/15

怯えた声で愛の言葉を / 真島


肌を重ねるときに、貴方は私以外の何かを見ているように思える。それは過去に失ったものか、手に入らなかったものか。きっとはぐらかされて虚しくなるだけだから、尋ねることはしない。でも貴方は私に尋ねる。自分のことを愛しているか、と。貴方の過去も今考えていることさえも分からないけれど、苦しそうな貴方を救うために、嘘がバレないように震えた声で愛を告げる。貴方だけよ、と。私は貴方のただ一つの瞳に映ることさえ出来やしないのに。

2023/08/15


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