目の前には、エプロンをつけお玉とフライパンを持ち準備万端な女子4人。
手に持っているお玉で殴られて気絶出来ればどんなに楽になれるか、といつもでは絶対思わない事を心の片隅で思いながら、ロイは軽く深呼吸をし、前を見据えた。

「それじゃ、始めるよ。…覚悟はいい?」

本来はロイに言うべき言葉だが、そこは考えずに問いかける。
4人は力強く頷いた。













「じゃあ今からカレーの作り方を教えるから。一度に全員は見れないから、僕は順番に回っていくよ。僕はアドバイスしかしないから、この本見ながら頑張って」

場所は変わり、厨房。
色々壊れて近隣の人から苦情来たらどうしよう…ここベトレイヤーの家だから修理代は請求されないよね…と頭の片隅で色々と考えながら、ロイは4人に料理本を手渡す。
それを受けとると、4人はそれぞれの持ち場に向かった。














「さて…もうそろそろ行こうかな」

ロイは立ち上がると、一人目―――リエルのところへ向かった。

「えっと…まず野菜を切る…」

「どう?上手くやってr「―――エアカッター!」……っ!!?」

ロイが料理本とにらめっこして
いるリエルに話しかけようとしたが、彼女はロイには気付かずに突然エレメンタルフォースを放った。
―――野菜を切るために。

「ちょ、何やってんのさ!?」

「あ、ロイさん!見ての通り、野菜を切ってるんですよ♪」

「あぁ、そう…」

一人目からまた面倒なのが来た、とロイはこめかみを押さえながら、一言言った。

「…料理本に、忠実に」

「…………?」

それだけ言うと、ロイはその場を去った。













「次は…ネリア、か…」

何が起きているのかは大体予想出来ている。
溜め息を隠さず、ロイはネリアの元へ向かった。









「…ネリア、分かりきってるけど、ここら辺に飛び散ってる赤、何?」

「…血ですが?」

「うん、ありがと…」

その場はまさに戦場。
何をどれだけ捌いたのか、様々なところに血が飛び散っている。
一応慣れている事なのだが、慣れていいものなのか、と軽く悩みながらロイはネリアの手元を見た。
そこには―――

「…何、作ってるの?」

「…カレーライスですが?」

「…ごめん聞いて」

「いえ」

「…頑張って」

言う事もなく、彼はその場を去っていった。

[ロイ君の長〜い一日。]

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