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「しょうがねーな、じゃーサーブ先どーぞ?3セット先取な」
「ナオトさんはジュニアの頃関東大会優勝してんだぞ!勝てるわけねーじゃ、ん?」
やば、見えなかった。風が吹いた。サナダのサービスエースが決まってからはあっという間だった。あっというまに、サービスエース4本。ナオト先輩とやらは文字通り、手も足もでない。ナオト先輩にサーブ権が移ってからも、リターンエースで4本。再び、サービスエース4本。ギャラリーもあっけにとられて拍手すら起きない。
「もっと楽しめるかと思っていたが。なまえは諦めてもらうぞ」
息も切らしていないサナダが握手を求めると、ナオト先輩はラケットを叩きつけてコートを後にした。かっこ悪。「つーかあのおっさんかっこいいじゃん!」「なまえちゃんとお似合いかもね」なんてさっきの女の子たちが言ってたのが聞こえたからこないだの援交の件は許す。
汗かいてたらふいてやろうかななんて用意していたタオルも使うことなく、テニサーの連中を置いて大学を後にする。あーあ、映画終わっちゃったじゃん。
「つーかバカじゃねーのあんな勝負するなんて」
「・・・嫌だったか」
「嫌じゃねーよ、つーか負けたらどうすんだよ」
「ろくに練習もしていないような連中に負けるような鍛錬はしていないからな」
「あっそ」
あたしは嬉しかったけどな、あんなアホみたいな勝負受けて、さらっと勝って、なまえは渡さないって言ってくれたの。
歩き疲れて公園のベンチに腰掛ける。ちっちゃい子たちが元気においかけっこしていて、にぎやかだ。となりに座るサナダがめずらしくちいさな声をつぶやく。
「心配していた」
「なにをだよ」
「年齢差もあるし、なまえを縛ってしまうのじゃないかと」
「そんなの気にしてっから老けんだよ!」
「・・・お前が好きだ。誰にも渡したくない。俺と付き合って欲しい」
「・・・ば、ばっっっかじゃねーの!そんな恥ずかしいこと言えんのサナダだけだよ、しょうがねーから一緒にいてやっても、いーよ」
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