もし仙蔵が潔癖だったら



おふろにする、それともごはんにすると聞いたら風呂に入る汗を流したいんだと言ってあなたは脱衣場に直行。かさかさと衣擦れの音がする。私は夜ごはんの準備のために台所へ。これだけじゃ寂しいからもう一品くらいつけようか、仙蔵があがるまでにはまだ時間がかかるだろうから、簡単なものなら作れるはず。


ことこととシチューをにつめ、トースターにフランスパンをセットする。
がたん!と荒々しくバスルームの扉がひらき、そのままリビングのほうへ足音が近づいてくる。今日は珍しく早いのね、いつもはこれでもかっていうほど磨いてくるの、「あれはなんだ」、に。


「え、」


振り替えればタオルを腰に巻いたままの仙蔵で、怒りを露にしていた。私、なにかしたっけ、


「どうしてシャンプーが右側なんだ」


シャンプー、右側、?
昼間、おふろを掃除したけれど、仙蔵はいらいらと続ける。


「シャンプー、コンディショナー、トリートメント、ボディーソープ、使うものは左からだろう、そんなこともわからないのか、おかげで泡立たないコンディショナーで洗ってしまったそれにドアの右端にカビができていた、あんなところにいたら汚れてしまう」
「……」
「なんとか言ったらどうだ」
「ごめん、なさい…」


同棲をはじめてから数ヶ月、ずっと我慢していたらしい。四隅にたまった埃だとかベッドのシーツは1日1回変えろだとかトイレのシートは使う事に変えたいのだとすごい剣幕で告げられた。こんな仙蔵は初めてで、どうしたらいいかわからない。


「お前の香水の匂いも耐えられん」


香水をつけてるつもりはなかったのだけど、洗濯物の匂いだろうか。


「男の匂いがする」
「…え、」


いつ、どこで、そんな匂いがつくというのだろうか。覚えのない私は戸惑う。


「お前は外に出るな、これからは私が買い物もする、雑菌が家に入り込むなどごめんだからな」
「…ごめん、なさい…」
「もうお前に掃除もまかせておけない、私に任せておけばいいのだ。いいか、一切触るのではないぞ」


頷くしかできない私を一瞥して、仙蔵はお風呂に戻っていった。



ちしま
(仙蔵ってちょっと潔癖っぽいなとおもってやった。反省はしている)